25 / 29

第24話 おかん気質

洗面所に連行され、 「歯が先? 顔が先?」 と、八巻に問われ、 「歯」 と答えた。 「白? 青?」 「白」 白い歯ブラシに歯みがき粉をつけて、渡された。 ちなみに、青い歯ブラシは南ちゃんの。 泊まることが多いから、南ちゃんの私物もそこそこあるのだ。 歯をみがかれそうな勢いだったけど、それはなかった。 「八巻って、お母さんみたい」 「ああ?」 と、八巻のタレ目が少しつりあがった。 はいはい。 お腹空いていると狂暴になるよね、動物は。 八巻にせかされまくって、登校の準備をし、僕達は寮の食堂に来ていた。 朝ごはんを食べる時間帯なので、食堂はたいへん混雑していた。 「……人、多い」 と、僕。 「そう? いつもより少ないよ」 と、南ちゃん。 「遅い時間だからねぇ」 と、八巻。 食堂の入り口でウェイターに、IDカードで支払いを済ませると、テーブル番号の札を渡された。 朝食はビュッフェスタイルなので、各々(おのおの)で、食べ物をチョイスしてくるのだ。 僕はドリンクコース、と入り口で言ったので、二人とは金額が違っていた。 朝食は、全品食べる普通コース、デザートとドリンクのデザートコース、飲み物だけのドリンクコースと3パターンが選択出来るのだ。 ドリンクコーナーで紅茶を選び、大きなカップに紅茶半分スプーン大盛砂糖3杯。 砂糖が溶けたら、牛乳を注いでミルクティーの出来上がり。 テーブルに行くと僕だけ。 4掛けテーブルに1人。 視線がちらほら。 だから、食堂は嫌なんだよなぁ。 飲み物だけなら、コンビニでも自販機でもいいのに、という眼差しだ。 いつもはコンビニですよ。 それも、コンビニコーヒーじゃなくて市販品。 ついでに、チョコレートとか甘いお菓子を買うことが多い。 ちびちびとミルクティーを飲んでいると、南ちゃんと八巻がトレーを持ってやってきた。 二人共、トレーいっぱいに食べ物がのっていた。 朝からそんなにたくさん、食べられるのか。 すごいよ。 「間宮、それだけ?」 と、八巻。 「朝は食べないの」 と、僕。 「ほんとに食べないんだ」 と、八巻。 「気にしなくていいよ。いつもことだから。では、いただきます」 と、手を合わしてから朝食を食べ始めた南ちゃん。 「いただきます」 と、八巻も言って食べ始めた。 まわりの視線がますます痛くなってきた。 南ちゃんと八巻。 ただでさえ、目立つ二人との食事。 あいつ、誰? という感じに見られている。 …………なんかいたたまれない。

ともだちにシェアしよう!