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第7話

過去の話をしよう。 俺、エドアスと元婚約者、ラバセナが出会ったのは、親の共通の知り合いが開いたパーティでだった。 今思えば、集団お見合いのようなものだったのだろうか。 ほとんどが、子爵男爵の嫡子次子の中、準男爵の息子である俺は異色だっただろう。 元婚約者のラバセナは当時からすでに、愛らしい容姿をしていた。 ハチミツ色のふんわりとした髪に、碧の瞳。白い肌を紅潮させて、はにかむ様子は、どう見ても女の子だった。 対して俺は、前世と同じ、光を吸い込むような黒髪に、見方によっては赤く見える、赤銅色の瞳。 目を引くようなものは何もないはずなのに、俺が婚約者に選ばれたのは、ひどく不思議だった。 けれども、子爵の息子との縁談と言うことで、両親はすごく喜んだ。 愛らしい容姿にも、ことさら喜んでいたように思う。 ……。 そういえば、前世とは、ここが絶対的に違うな。前世じゃ、男と女でなければ、子はできないとされていた。 この世界は違う。 男同士、女同士でも、精霊樹に許しを得た配偶者同士が、子を作れる。 精霊樹に願うことで、夫婦となったそれぞれが、雄性もしくは雌性を帯び、その上で交わることで、雌性側が子を宿すのだ。 むしろ、精霊樹に許されないなら子は作れない。男女であろうと、雄性雌性を持たないので、子ができないらしい。 精霊樹に別々に許された、雄性と雌性であろうと子はできないというから、徹底している。 この世界では、精霊樹によって、お互いが唯一の番同士になるのだ。 まぁ、かといって離婚ができないわけではないが。配偶者の片方であっても、精霊樹に必死に請い願えば、雄性雌性が解除されるという話だし。両方ともが願えば、もっと簡単に解除される。ただし、本気で願わなければ解除されず、互いに想いが残る相手である場合は、解除されないそうだ。それでよりを戻す落ちは、こちらの物語の定番だしな。 まぁ、そんなわけで、俺の今世の両親は、男同士だし、俺の婚約者も男だったわけなんだが。 まぁ、この婚約者。 可愛すぎるのがいけなかった。 紹介する友人、知人、老若男女問わず、皆、彼を見ると赤面する。 年の近い者ほど顕著だった。思えば、王太子なぞ、ゆうに10数える間は固まっていた。 いつもは眉ひとつ動かさない、堅物眼鏡でさえ、表情を変えてたな。ああ、こいつは王太子の側近だ。あのホールにも控えていた。 さらに、ラバセナは愛想よく、礼儀を損なわない程度に、明るく積極的に話すので、誰とでもすぐに打ち解けるのだ。 隣にいる婚約者としては、ちと不安だったが、交遊関係が広がるのは良いことなので、特に何も言わなかった。 それが、いけなかったのか……。 まさかこうなるとは、思わなかったもんな。

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