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第11話
あれから、一週間が経った。
恙無 く行われた、婚約『撤回』が認められ、元婚約者と王太子は、無事に恋人同士を満喫できる間柄となったようだ。認められているかどうかは、置いといて。
俺はというと、まぁ、周囲のよく関わる人間は思い出して、というか覚え直して、すごく充実した毎日を過ごしている。
「兵隊のおにぃちゃん、ありがとう~」
「おぅ! もうはぐれんなよ!」
今も、迷子の少女を親に送り届けたところだ。
城下町の市場は、朝市が退いた後でも、人通りが多い。
人通りが多いと、迷子は元より、盗み が増える。そうでなくても、小さなトラブルは、ひっきりなしにやってくる。
そんな感じなので、城下町の見回りには、たまに王宮兵も駆り出される。月に数回、市場の人の増える日に、応援を求められるのだ。
閑職、と思われがちだが、ふだん城下町の見回りをする衛兵達では、対処できないものを解決できることを求められるので、実力がないと認められない、ある意味栄誉職だ。
まぁ、迷子は、衛兵でも十分対処できるだろうけど。
記憶喪失する前から、俺はよく参加していて、町の人たちからも「王宮兵さん」として覚えられている。
はっきり言おう。
月に数回の城下町巡回は、俺の癒しだ。
「部隊長ぅ。今日は、割りと平和ですねぇ」
この、のんびりとした話し方の小太りは、ネブラという。今回の巡回ペアだ。
この話し方と体型と、その戦闘能力とのギャップがスゴい男で、なので、町ではマスコットキャラ扱いされている。
戦闘能力の高い人間は、威圧感のあるものが多い。彼は子供にも対応できる、貴重な戦力だ。
「そうだな、まぁ昨日、衛兵たちが大捕物をしたというし」
そんな彼と、のんびり町を歩く。
「ですねぇ。しばらくは、警戒して大人しくしてくれてればいいんですけどぉ」
「そういう話をしているときに限って、なにか起こるんだよなぁ」
ため息をつきつつ、返事をしていると、巡回係ではないはずの王宮兵とすれ違った。
何やら、焦ったような顔で、探し物をしているようだ。
「トラブルの予感ですねぇ」
不吉なフラグは、無事に回収されたようだ。
俺たちを通りすぎた、王宮兵を追って、二人で引き返した。何が起きたのか、聞かなきゃならない。
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