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第13話
件の場所へ行くと、確かに、小さなアーチの下に、小路が続いていた。
「何てことだ……こんなものが」
「つい、5日前に、ここの住人が完成させたそうですよ。上は、住宅のままなんです」
ここに住む、老人というにはまだ若い、夫婦二組による手作りの路地だ。
隣り合う二つの家の、ちょうど間に、壁に沿うように作られた路地。本来は、庭の一部と廊下だったそうだ。
「私有地か。地図に記載は難しいな」
「ですね。けれど、誰でも通れるようにしてあるんですよ。ここに続く広場を、もっと知ってもらいたいとかで」
「はぁ……やはり、現場を離れるものではないな」
ため息をつく、団長の横顔。
ドキドキを押さえ込みながら、並走する。
やがて、広場というより、小庭のような場所に出る。
それほど広くないスペースに、色とりどりの花が咲く、けれども落ち着いた雰囲気のいい場所だ。確かに、デートにピッタリだな。
「この広場か、確かに……」
そう、呟いた次の瞬間、団長は出口の片隅に、蹲っていた影に駆け寄った。
「……! ロベルト様!!」
顔をあげた影は、金色の髪に、青い瞳の、絵に描いたような美形であった。これが、王太子ロベルト・イングヴァル・スリアンか。
こちらを確認した王太子は、すがるような目で団長を見た。
「大丈夫ですか? お怪我は」
そう言って、跪く団長に、かるく首を振る王太子。
「大事ない。ラバセナが庇ってくれた……」
だがそう答えた直後には、俯き、苦い顔で腹を押さえた。
「ラバセナ殿は?」
そういえばいない。二人でお忍びデートだったのではないのか?
庇った、ということは、何かトラブルがあったのか。
「……悪漢どもが、連れていった。ついさっきだ」
緊張感が走る。
子爵子息を、連れていった?
本当に……ただの悪漢なのか? 王太子と貴族を相手取るなんて。
「どちらにですか?」
「お前は……」
覚えていないのはこちらだけ。
王太子はもちろん、俺が誰なのか一目でわかっただろう。仮にも親友同士だったようだし。
けれど、今はそんなの要らない。
「拐われたなら、一刻を争います。どちらに、向かいましたか」
「……あっちに行った。「いい場所がある」などと言っていた」
俺たちの来た路地と、反対側の出口を指す。あちらが元々あった通路だ。
いい場所、か。
アジトか、たまり場のようなところがある、ということか? ナイスだ、王太子。
「わかりました。王太子は、一旦王宮までお戻りください。我々が必ずや助け出しますゆえ」
「いや、私も行く」
え?
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