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第14話
「私も行く」
王太子が、立ち上がろうとするのを、団長は押し止める。
「こちら側の路地から探すならば、複数箇所を探すことになります。時間も限られますので、我々にお任せください」
「……ッッ ……わかった……」
良かった。状況はきちんと把握できる人のようだ。まぁ、そうでなくては、王太子はできないよな。
団長が、王宮に送る人員を選定している間に、王太子が話しかけてきた。
「エド……僕のことを覚えていない、というのは本当か」
なんか、一緒にいたっぽい、的なことは覚えてますよ。
でも言わない。どんな関わり方だったかを、覚えてないから。
「は。申し訳ありません。せっかく身分を越えてお側に置いてくださったというのに」
「ッ! ……本当に、覚えていないのだな……」
頭を下げると、とんでもなく傷ついた顔をされてしまった。
しまったなぁ。なんか余計なこと言ったな?
これ以上話すと、もっと余計なこと言いそうだ。黙っとこ。
……あ、でもこれだけ、言っとこうかな? いや、回りに言った方がいいかな?
王宮まで、王太子を送り届ける兵に、言付ける。
「王太子の、お腹の怪我、しっかり医者に見せるよう、側近達に言付けてください」
「え?」
全員に疑問顔をされた。
え? 誰も気がついてなかった!?
「なんで気がついた」
「や、隠そうとしてるけど、ついつい手が行ってるじゃないですか。ちゃんと医師に診てもらってください」
誰も気がついてなかったなら、言って良かった!
実は、腹を押さえたのは一度だけだが、その後、手をやろうとするのを、抑えるような仕草が直々見受けられたのだ。
こいつは、いっつも怪我を隠そうとするんだよ。そのたびに指摘する役は、俺だったなぁ。
って、おや?
「……ええと……余計なことを申し上げました」
深々と、頭を下げる。
ゆるく顔を左右する王太子が、ぽつりと「全く覚えていない訳ではないんだな」と言った。
「きちんと診てもらう。ありがとう」
王太子は大人しく、王宮に戻っていった。
やれやれ。
しかし、王太子に怪我をさせるなんてな。
ラバセナ子爵令息は、何やってんだ?
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