14 / 25

第14話

「私も行く」 王太子が、立ち上がろうとするのを、団長は押し止める。 「こちら側の路地から探すならば、複数箇所を探すことになります。時間も限られますので、我々にお任せください」 「……ッッ ……わかった……」 良かった。状況はきちんと把握できる人のようだ。まぁ、そうでなくては、王太子はできないよな。 団長が、王宮に送る人員を選定している間に、王太子が話しかけてきた。 「エド……僕のことを覚えていない、というのは本当か」 なんか、一緒にいたっぽい、的なことは覚えてますよ。 でも言わない。どんな関わり方だったかを、覚えてないから。 「は。申し訳ありません。せっかく身分を越えてお側に置いてくださったというのに」 「ッ! ……本当に、覚えていないのだな……」 頭を下げると、とんでもなく傷ついた顔をされてしまった。 しまったなぁ。なんか余計なこと言ったな? これ以上話すと、もっと余計なこと言いそうだ。黙っとこ。 ……あ、でもこれだけ、言っとこうかな? いや、回りに言った方がいいかな? 王宮まで、王太子を送り届ける兵に、言付ける。 「王太子の、お腹の怪我、しっかり医者に見せるよう、側近達に言付けてください」 「え?」 全員に疑問顔をされた。 え? 誰も気がついてなかった!? 「なんで気がついた」 「や、隠そうとしてるけど、ついつい手が行ってるじゃないですか。ちゃんと医師に診てもらってください」 誰も気がついてなかったなら、言って良かった! 実は、腹を押さえたのは一度だけだが、その後、手をやろうとするのを、抑えるような仕草が直々見受けられたのだ。 こいつは、いっつも怪我を隠そうとするんだよ。そのたびに指摘する役は、俺だったなぁ。 って、おや? 「……ええと……余計なことを申し上げました」 深々と、頭を下げる。 ゆるく顔を左右する王太子が、ぽつりと「全く覚えていない訳ではないんだな」と言った。 「きちんと診てもらう。ありがとう」 王太子は大人しく、王宮に戻っていった。 やれやれ。 しかし、王太子に怪我をさせるなんてな。 ラバセナ子爵令息は、何やってんだ?

ともだちにシェアしよう!