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第16話

衛兵隊長との繋ぎと王宮への人員要請を、ネブラ達に任せ、他の候補2ヶ所にも人員を送った団長は、本命である森へ向かった。 同行は、王宮兵が4名。俺、含む。 「どうやら、顔と名前を忘れていても、は覚えているところもあるようだ。『彼』は扱いが難しいときがある。頼みたい」 そう言われて、同行が決まった。 ぐぅの音もでない。ぜんぶラバセナ子爵令息のせい。無事でいなけりゃ覚えてろよ。 城下町の北東側にある森は、職人街と、主に貴族の住む区画とを分けるように、城下町を囲う壁と王宮群との壁を繋いでいる。 王宮の北にある『王家の森』の次に、王都の中心に近い場所にある、この森には呼称がない。 南西にある『憩いの森』にはあるのに、である。 理由として、他の二つの森とは違い、立ち入る人があまりいないからだと思われる。 王宮兵が呼ぶときには、単に『王宮北東の森』。カッコつけた者は『王都の暗き森』『迷いの森』などなど。 ま、確かに暗いわな。 俺は、北東の森を前にして、そんな感想を浮かべていた。 「応援が来るまでは、森の浅いところを探索しよう。ここから東西に別れる。なにか見つけたら、すぐに伝達。サインは――」 団長から次々に指示が飛ぶ。 森に繋がる道は、ここと、東西の端にある三ヶ所。ここから他の道までを探索だ。 始め、団長も東側組に行こうとしていたが、伝達を受ける側として道にいてもらえるように、進言した。 やっぱり、何かおかしいな。 いつもなら、応援が着いたときの確認と指示出しに、残るはずなんだけど。 団長、具合、悪いのかな? 俺は、森を東に進みながら、そんなことを考えていた。 俺たちの来た道から、西と東では、東への方が遠い。西側がより王宮に近く、東は職人たちの工房の裏手ばかりで、人目が少ない。 さらに、工房の仮の物置として立てられた小屋が、所々にあるのだ。 このどれかに潜んでいるのだろうと予想がつく。 俺と、組になった王宮兵は、足音をあまりたてないように慎重に、小屋を一つ一つ確認していった。 東の道に着くまでに、見つけた小屋は16棟だった。 ――ラバセナ子爵令息らしき影は見つからなかった。

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