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第19話
結局無難に答えることにする。
「作戦に従います。子爵令息がどういう反応をするか予想できませんが、その反応が必要かそうでないかで決めていただければ」
団長は一瞬目を見張ったあと、また難しい顔に戻ってしまった。
うーん。やっぱり悩み所だよなぁ。
ならば、これも言っておくべきかなぁ。
「あの、同行の近衛兵の中にも、子爵令息と仲の良かった方が何人かいますので、彼らと固めて考えていただければと思います。たぶん、似たような反応をすると思いますので」
「は!?」
その進言に、大きな反応を示したのは、団長ではなく、近衛兵をまとめる一人だった。
彼は近衛兵の副団長で、ラバセナと関係がある者の一人だ。
「何を……」
「貴方と、あの方と、あちらの方。子爵令息と仲が良かったはずです。『反応』の要不要で作戦をコントロールするなら、行動を固めるべきだと」
示したのは、地位や生家が高いものと、容姿が優れたもの。
絵のように場面が浮かぶ。ラバセナと彼らそれぞれが笑いあったり、寄り添ったりしている。
忘れている時期に、そんな場面を見たのかもしれない。
「な……何の証拠があって……」
戸惑う近衛副団長に、首をかしげる。
何言ってんだコイツ。
「単に、作戦に必要だろうから、提案しているにすぎません。彼に過剰に反応して欲しくないのに、関係を黙っていたせいで作戦失敗になったらどうするんですか。もし、他にもいるなら、今のうちに名乗ってください」
そう言って、周りを見渡す。
近衛副団長は顔を赤くしていたが、納得してくれたのか、引っ込んだ。
そして、そういう理由ならと、二人の人間が手を上げた。
仲良くはしていないが、言い寄られたことがあるらしい。うん、フラれたのは間違いで、自分のために助けに来てくれたとか騒ぎそう。
最初に上げた3人が、その手があったか! という顔をしていたけれども、手遅れですよ。
最終的に、過剰に反応させるべきではないという意見になり、俺を含む6人は、周囲を囲む側に配置された。
突入するのは、団長を含む、体格のいい強面6人。ラバセナの趣味ではないから。
そして、配置についた頃、小屋の中からの物音が何なのか、全員に理解されることとなった。
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