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第21話
元婚約者の情事の様子など、興味がないとばかりに、周囲警戒班に入ったが、後悔している。
中の様子を見ることができるということは。
突入隊の荒ぶる様子を見ることができるという事なのだ。
団長の戦闘シーンをガン見できるという事なのだ!
中の様子を食い入るように見ていた連中が、呆気に取られるように、ピタリと動きを止めて、その場の雰囲気が変わったかと思うと、何言かの怒声が中から聞こえて後、壁の一面を破って悪漢が飛ばされてきた。
悪漢が木に打ち付けられたのを見た後、振り返ると、そこにいたのは、剣を鞘に入れたまま、振り抜いた姿の団長。
すぐに姿勢をただして、周りへの指示を始めたけれど、出来ればもう少し、見ていたかった。
ああ、なんで中を見る方に回らなかったんだろう。
決定的なシーンを、全部逃してしまった。
自分への怒りと後悔を、悪漢どもを縛り上げる力に、全力で変換した。
悪漢3人は、きつく縛り上げて、王宮兵が請け負った。
拐かされた子爵子息、ラバセナは、近衛副団長が引き取ってくれた。イチャイチャしながら。
目に毒なので、さっさと退場してください。
死んだ目で、悪漢どもの見張りをしていると、マクマホン団長がこちらに来た。
「ヴァールグレーン、大丈夫か?」
ひどく、心配そうな顔で。
「はっ! 未だ3人とも気を失ったままですので、問題ありません」
悪漢はみんなまだ、夢の中だ。逃げたり抵抗したりする様子は、当然ない。
壊れた壁の木でも使って、簡易的なソリでも作るかね。
「いや、そうではなく……」
団長が、がっかりした顔をしている。
なんだ?
「その……子爵令息をみていたろ?」
あ。
気遣ってくれたのか!
さすが、団長は優しい。でもなぁ。
「いえ、令息の声を聞いていたら、いろんな浮気場面を思い出したので、あれを見てるとなんというか……よくやるな、と」
死んだ目をせざるを得ない。
視線の先は、イチャつく、近衛副団長と、王太子の恋人と噂される人物。
「すっ……すまない」
マクマホン団長は、大きな背を縮めて、本当に申し訳なさそうな顔をして俯いた。
本当、
大鬼 だ、鬼神だ、化け物だ、と揶揄される、この人の方がよっぽどカワイイ。
俺は団長のその姿を見て、とても微笑ましくなった。
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