22 / 25

第22話

あの騒ぎから、2週間が経った。 元婚約者ラバセナは、けっこうな修羅場になっているそうだ。 実は、誘拐事件の報告書を、事細かく書いたのも原因なのだが、首謀者と共謀者、全てとラバセナは関係を結んでいたことがわかったのだ。 王太子は、軽い浮気は認識していたらしいが、ここまでの規模だとは思っていなかったようで、別れる別れないの修羅場になっている。 「オレとしては、さっさと見切りをつけろと言いたいが」 「そうですよね」 今、マクマホン隊長と、昼食をともにしている。 食堂ではなく、城下町のランチだ。 昨日、空いていたら一緒にと言われて、食堂でみんなと一緒に食べるんだと思って、軽く了承したら、こうなった。 嬉しいけど、緊張する。 ものすごくオシャレで、美味しそうなランチだけれど、味なんてしない。 どうして、二人だけでランチ、なんてことになったんだっけ。 頭を巡らせても、きっかけは思いつかない。 忘れてる頃に何かあるのか、でもあれからもう一ヶ月近くになる。直近と言えばそうだが、最近と言うには、間に起こったことが多すぎる。 余所事に集中しすぎて、隊長の言葉を聞き逃すほどだ。 「体調が悪いのか?」 「いえ、そうではないのですが」 ついに心配されてしまった。だいぶん失礼な態度だったからなぁ。 そう思っていたら、意外な切り口をされた。 「やはり……彼を助けたいか?」 「へ?」 助ける? 誰を? 「曲がりなりにも、長く婚約していた相手だから……」 「あー、それはないです」 苦笑いで、手を振る。 「第一、彼と婚約していた記憶はありません」 そう。俺に実感はない。 彼は『王太子の恋人』なのだ。自分の国の王太子の周囲の人間だから、という以上には、興味がない。 それに、ずいぶん『交遊関係』が広いわりに、俺には、『そういう場面』を体験したらしい『記憶』もない。 清い、というか、間を保った関係を続けていたんだろう。 つまりは、自分とは本当に『なんの関係もない人間』なのだ。 「ただ、あんまりいい印象はないので、一国民としては、王太子とは離れてほしいかな」 「そうか……」 飲み物を口にすれば、隊長からそれ以上の話はなかった。

ともだちにシェアしよう!