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第24話

「部隊長~、オレもう無理っす! 戻ってきてください~!」 部屋に突撃してきた元・同僚、兼、部下のカルニュにいきなり嘆願された。 内容は言われてないが、伝わっている。もう、五度目の突撃だからな。 「いや、俺もう部隊長じゃないし。一兵卒だし」 「いや、団長補佐は、一兵卒じゃないっす」 あの日の翌日、俺に辞令が出た。 ただの部隊長だったのが、分隊長を飛び越えて、団長補佐だとか、あまりにも無茶苦茶な辞令で、前日の告白のせいかと疑った。 いわゆるコネによる、出世? しかし、違ったらしい。 例の騒動で、近衛隊が編成され直した際、王宮兵団から近衛隊へ、かなりの引き抜きがあったらしい。 当然、団長にも打診があったわけだが、引き抜きの数を指摘して、これだけ抜かれたら混乱が起きるから、こちらに非がないのなら、頭は据え置きにしてくれと、交渉したとか。 団長の片腕の補佐さんも、引き抜かれたらしく、誰か使えるものを、と探して……白羽の矢が当たったのが、なぜか俺だったそうだ。 推薦者は、あの時捜索に加わっていた、引き抜かれた前任者たちと、(まともな)近衛兵たち。 ネブラのほうが……と思ったら、すでに分隊長を拝命済みだった。しかも、前任からの指名で。 ああ、うん。そう言えば、同門だとか言ってたな。あそこ、すっごい実力主義なんだっけか。すげぇや、ネブラ。 遠い目をしていたら、思いっきり揺さぶられた。 「オレ、まだ兵団に入って二年目のぺーぺーっすよ! 部隊長なんて無理っすー!!」 「いや、お前物覚えも要領もいいじゃん。イケるイケる。てか、ぺーぺーって何?」 「無理っすー! 話そらさないで欲しいっす!!」 涙目ですがり付く、カルニュをなだめて部屋から追い出した。 アイツは本当に、できるヤツなんだ。じゃなきゃ、団長の不在を狙って、団長補助室に突撃し続けることなどできない。 俺は、団長室に移り、積まれた書類の整頓を始める。 団長補佐と言っても、本当にずっと傍にいて、団長を補助し続けるのは、副団長や侍従の仕事だ。 オレの役目は、団長が書類仕事をする、この部屋を守ること。 縁の下の力持ち、兼、最終防壁と言えば、聞こえはいいが、城下町が恋しい。 だが、ここを勤めあげれば、実力が認められる。 実際今まで、実力があると言われていたのは、仲間内だけの話。甘い評価と疑われても仕方ない。 書類仕事は今までまともにしたことがなかったから、苦手は苦手だが、すぐに慣れるだろう。 俺には、目標ができた。 あの人の、妻になる。 誰が、憐れまれただけの、力のない、愛人同然の妻だなんて、言わせるか。 実はもうこの時、すでに実力は認められ、『辺境伯の嫁』教育が開始されていたとは、知るよしもない。  ~fin~

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