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第3章-5 ケット・シー 1
「…随分降りたな。」
かれこれ20分は下っており、既に “うろ” の入口は見えない。
ライナーの言葉に双子達も上を見上げる。
「そうねぇ。後どれくらい続くのかしら?」
「うーん。帰りはずっと上りってコトだよね。…うわぁ。キツそう…」
帰路の事を考え、双子達は若干引き攣っている。
「…もうすぐ。……ちか、い、の…」
そんな双子を励ますようなリアの言葉に、双子は、ぱっ、と顔を輝かせた。
「ホントに?やった~…って言ってる間に、扉が見えて来た!」
4人揃って扉の前まで来ると、ライナーはリアを腕から降ろした。
その場で、ぴと、と、ライナーの腰辺りに引っ付いて見上げて来るリアの小さな頭を優しく撫でてやりながら、目線は双子に向かって口を開く。
「…俺が扉を開ける。お前達は俺が良いと言うまでは、3人でココにいろ。…いいな?」
そう言うとライナーは、引っ付き虫になっていたリアを優しく離し、後ろに立つ双子の間へと入れた。
すかさず双子がリアと手を繋いだのを確認すると、ライナーは扉に向き直る。
改めて見ると、四隅に見たことの無い聖獣のような生き物が彫られた、重厚そうな扉である。
取っ手に使われている金属は錆びついてはいるが、まあ、大丈夫だろう。
「少し下がっていろ。」
3人にそう告げ、ライナーは取っ手に手をかけた。
扉の向こうには、更に薄暗い通路が続いていた。
先程までの “うろ” の階段と違うのは、壁に光石が埋め込まれており、視界ゼロでは無いことだ。
ライナーは慎重に狭い通路を進んで行く。
やがて通路の出口に辿り着いた。
そこは鉄格子の扉になっていたが、長い年月をかけて朽ち果て、ライナーが少し力を入れるだけで簡単に開いた。
そうして出たのは、直径300m位の円柱状のホールだった。
その円を描く壁沿いには螺旋状の2つの階段が架けられ、壁は全て書棚になっていた。
ライナーが通って来た通路は、螺旋階段の中腹辺りだ。
あちこちが崩れ、倒壊寸前のよう見えるが、ここは確かに…。
「…書庫?…いや、図書館か?しかしコレは…。」
双子が夢で見た場所がココだとするならば、その表現が“書庫っぽい場所”となるのも頷ける。
確かにここは書庫、もしくは図書館と呼ばれていた場所だろう。
それもかなりの規模の。
しかし今、ライナーの目前にあるのは異様な空間だった。
ガラス張りだったと思われる天井も植物に覆われてしまってはいるが、その隙間から所々光が入るおかげで、ホール全体を見渡せる程度には明るい。
天井まで30mはあるだろうか。
その高い天井までの壁という壁を全て、木の根というか、蔓のようなモノが絡まりながら覆い尽くし、天井まで伸びている。
通路出口が塞がれていなかったのが奇跡的に思える程、ビッシリと壁全体を覆っていた。
更には、壊れた机や椅子、分厚い本等が散乱する床全面に、黄色い水晶のような結晶体が生えていた。
結晶体の個々の大きさは20cm程だが、壁を覆い尽くす蔓と、床を覆う黄色い結晶体。
更に、中央部にはそこだけ異常に成長し、幅1m、高さ3mはありそうな一等大きな結晶体があり、六角中をしたその結晶体を包み込むように蔓が絡み合っている。
それだけでも十分に異様な光景であるが、何よりライナーが気になるのが、このホール全体に感じる、「生命の気配」だ。
崩れ落ちそうな螺旋階段からホールを見下ろし、あるいは天井を見上げて、その気配を探るが、どうにも特定できない。
「…誰かいるのかっ!?…俺達を、リアを呼んだのなら隠れていないで出てこい!」
ケット・シ- 1 END
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