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第4章-1 Prologue
1417年 雷の月・初旬
そこはマルシエの廃墟街の東口から出て、北にある「迷いの森」とは反対方向にある、「泉の森」
森の名前の由来ともいえる、森のあちこちに点在する泉は、どれも直径20m程しかない小さな物だが、傷を癒す効果のある「癒しの泉」をはじめ、「解毒の泉」や逆に「猛毒の泉」等、どれも独特の特徴を持っている。
それぞれの泉は、そこで生まれた精霊達が守っており、人の身で近づくことはまず出来ない。
その泉の森の中にある、時として過去や未来を水面に映す、通称「七色の泉」。
泉をまたぐアーチ型の橋のような岩と、その七色に輝く水の色が特徴だ。
常であれば、岩を映すだけのその泉に、今日は違う影が映っていた。
その影を、七色の泉の精霊達が遠巻きに見ている。
ここまで来れる“人”などまずいないと思うが、それでも万が一“人”であるならば即攻撃。
それがこのマルシエに生まれた精霊達の本能だ。
ソレは、岩の上に胡坐をかき、軽く目を閉じ瞑想する白髪の老人に見える。
顔や手に深く刻まれた皺は、生きて来た時間の長さを物語っている。
しかし明らかに“ヒト”としての気配が希薄だ。
あるいは本体は“ここ”には無いのかも知れない。
どうして良いか分からず、精霊達は困っていたのだ。
だから遠巻きに見ているしか無かった。
そこへ精霊達の大好きな気配が近付いて来た。
聖獣達や眷属の子らも一緒にいるようだ。
この日、新しい運命の扉が開こうとしていた。
第4章 Prologue END
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