17 / 163

第4章ー3 New fate-2

世界人口に対する魔術師の割合は、約20%程度だと言われている。 更に召喚士は、魔術師全体の1%程であり、とても希少だ。 しかし近年、魔術師の数自体が急激に減っている事が、世界的な問題となっている。 世界人口に対してギリギリ20%台を保っているが、その年齢別人数を見てみると、30歳代を境に、年々減少している。 それに比例する以上に召喚士の出生率は低下しており、特に20歳以下の召喚士は、全世界的に見ても推定で30,000名に満たないと言われている程だ。 一部の例外を除き、一般的に召喚士は魔術師の中でも特に魔力が強い者が多い。 ただし平均寿命80歳の世の中で、召喚士の平均寿命は46歳と、非常に短命である事も知られており、各国の魔法機関では最優先で原因究明と延命研究が行われている。 その召喚士が、全校生徒の5%以上在籍しているのだから、この学校のレベルの高さは他の魔法学校に通う者から見れば、計り知れない。 カルフィール魔法学校は世界各国から優秀な魔術師のみを集めた、超エリート校である。 例え、自国の王族や貴族であっても、資格を満たさなければ入学する事は叶わない。 逆に入学基準さえ満たしてれば、どんな立場に生まれた者でも、差別されること無く、最高の環境での学校生活が約束されている。 入学基準は明白にされてはいないが、一つだけ分かっているのが、歴代の学園卒業者…それも各年度の成績上位者6名のみが、卒業時に2枚ずつ渡される推薦状が必要であるという事だ。 要するに、ここへ入学してきた者達には必ず推薦者である「師」がいるという事だ。 今年の新入生は137名。 内召喚士クラスが4名。 編入生は2~5年生で6名、全員召喚士クラスである。 これで6学年全体の生徒数は979名、内召喚士は53名になる。 そんな中、一人は編入生、もう一人は新入生であろう2人は、周りからの視線の一切を無視し、寮監室をノックしている。 程なく出て来た寮監のハーディ・ロダは、明らかに異質な2人をぎょっ、とした顔で見ていたが、 「なっ?!…その子供は…お前の召喚精霊…?…じゃナイよ、な…、…ハ、ハハッ…そうだよな、…制服着てるもんな。」 少年を抱き上げた生徒は、もともと鋭い視線を、もはや殺人光線が出ているのではないか?というレベルにまで凶悪にし、くだらない質問をするな、とばかりに寮監を睨み付けている。 寮監は185cmある大柄な自分より、更に上からの鋭い視線を受けて汗びっしょりになっている。 「…5年に編入するライナー・クランツだ。…こっちは弟のリア・クランツ。…早く鍵をよこせ。」 カルフィール魔法学校は全寮制と言う訳ではない。 しかし無料で入れる上、遠隔地出身の学生も多いため殆どが入寮している。 もちろんリアとライナーも今日から寮生となる。 2~3階に召喚クラス専用のフロアがあり、リア達に割り当てられたのは、202号室だ。 部屋を確認したライナーは、こんなに人間だらけの場所に長居は無用とばかりに、汗だくの寮監にはもう一言もかけること無く、割り振られた部屋へと向かう。 寮の部屋は想像したよりも広かった。 入口を入って左右には4つのクローゼットとリビングへ繋がる白い扉。 中に入るとそこは共同スペースらしく、広めのLDKになっていた。 そのLDKを挟むように、2人部屋が2室ある。 4人部屋で、自分達以外に2人も他人がいるのは鬱陶しいが、個室に籠ってしまえばあまり関わり合いになる事も無いだろう。 左右の個室の気配を探り自室は右だと判断したライナーは、足早に右のドアをあけ、中に入るとすぐさま鍵をかけた。 そうしてやっと、片腕で強く抱いていた手を緩め、リアを横抱きに直して部屋に常設されたソファに腰掛ける。 「…リーア?もうココにいるのは俺だけだ。ペガサスやエスポワールも呼んで良いぞ?」 優しく髪を梳きながら頬と額に口付けてやっても、リアはまだ強張ったままである。 …無理も無い。 はじめて見る沢山の人間に穴が開くほど注視され、突き刺さる驚愕と感嘆。 悪意こそ感じなかったが、正直ライナーでも辟易としていたのだ。 人一倍感受性が強いリアが大丈夫なはずがない。 とにかく早くペガサスとエスポワールを呼び出させて、自分と聖獣達、…リアが安心する者ばかりでリアの周りを満たしたら、今日は早めに寝てしまおうとライナーは決意する。 しかしそんなライナーの決意を無駄にするように、部屋に人間の気配が近づく。 そしてノック音が響いた。 驚きで、びくっ、と体を跳ねさせたリアをとっさに抱き寄せたライナー。 リアはその胸にぎゅっ、としがみ付いたままドアを凝視している。 そうして再度ドアがノックされる。 決して大きな音では無いのだが、リア至上主義のライナーを苛ただせるには十分に不快な音。 舌打ちしたい気分だったが、リアを怖がらせると思い、ぐっと我慢して、ドアから死角になる所に配置された寝台にリアを連れていく。 そうして軽くキスしてから、改めて聖獣達を召喚して一緒にいるように言い聞かすと、ドアに向かった。 「…クランツさん?…あの…いないのかな…?」 「えー?それはナイっしょ。さっきの今なんだし。」 ドアの外でひそひそ話す声音にすらイラつきながら、ライナーがやや乱暴にドアを開けると、そこには2人のチビがいた。 「わっ!吃驚した…!あ、あの!僕は同室で3年生のウェルザ・コナーって言います!  隣の彼は同じく3年生で同室のサーガ・リンクス君です!  あの…良かったら一緒にお茶でもどうかなって。…クランツさん?」 栗色の髪に薄青の瞳で控えめな感じなのが、ウェルザ。 もう一人の金髪に茶色い瞳をした優男ふうなのが、サーガというらしい。 誘いに答えるでもなく、黙したまま冷めた目でチビ達を眺める。 沈黙に耐えられずにウェルザが困ったように視線を動かす。 すると隣の優男が、 「も~、オニイサン、怖い顔!せっかくのオトコマエが台無しッスよ?  せっかく何かの縁で同室になったんだしさ~仲良くシマショって~」 …あ、コイツ嫌い。 ライナーが感じた第一印象である。 New fate-2 END

ともだちにシェアしよう!