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第4章ー4 New fate-3 Side:ライナー

あれから俺は適当に、…本当に適当に人間達の相手をしてやり、これまた適当に理由を付けて部屋に戻った。 リアは、聖獣2体をやっと傍に召喚(よぶ)ことが出来て大分落ち着いたのか、聖獣達相手に時々笑顔も見せていて、俺は安堵した。 ならば風呂に入れてから寝かせようと、風呂場があるだろう奥にある扉を開けた。 そんな俺の行動を見ていたリアは扉の中が気になるのか、俺の背中にぴったりくっつき、そっと奥を覗きこんでいる。 そこは脱衣所兼洗面所になっており、風呂場に続くガラスのドアともう一つ、木のドアがあった。 何だろうと思い、リアを背中にくっつけたまま、扉を開けてみる。 「「…。」」 そこはとても小さな部屋で、見たことの無い物が納められていた。 白い椅子…のようにも見えるが、こんな場所にある意図が不明だ。 しかも真ん中が大きく開いており、下には少量の水が溜まっている。 「……ライ、ナー。…これ、…なに?」 リアが不思議そうに聞いてくる。 「…。」 だが初めて見る俺にだって答えようが無い。 …取り敢えず見なかった事にして、当初の予定通り風呂に行き準備をするとしよう。 まだ興味深そうにしているリアを今度は腕に抱きあげ、その物体が納められた小さな部屋の扉をしっかり閉めた。 そしてもう一つのトビラをあけた。 天上が低いため、リアがぶつからない様に屈みながら中に入る。 「「………。」」 いや、扉を開けた時から分かってはいたが…。 「………せま、い…?…ね。」 実に率直なリアの感想に大いに頷きながら、俺は自分の人間社会に対する認識の甘さを知った。 とは言っても、俺が知っている人間に対する情報等、微々たる物だ。 身体的な特徴として、体が小さく、寿命が短い。 種族の特徴として、欲が深く狡猾で残酷。…一部例外もいる…かも知れない。 位の事だ。 その中の1つである「体が小さい」と言う特徴が、実質的にどんな影響を与えるのか?までは考えていなかった。 せいぜい、家も小さく部屋も狭くて天井も低いのだろうな、位しか想像していなかった。 浴室の広さは、今まで俺達が入っていた風呂場の20分の1…位しか無く、浴槽も狭い。 小さなリア一人なら悠々と入れる広さだが、一緒に入るとなるとキツそうだ。 今は人に合せ、本来は青い髪を黒に変え鱗を消し、体も小さく擬態してはいるが、せめて風呂くらいは本体に戻りリアと2人でゆったり入りたいと思っていたが、…無理なようだ。 俺は取り敢えずリアを先に入れようと、浴槽の蛇口を捻って水を勢いよく出した。 リアには脱衣所で服を脱いでいるように言いつけ、一旦部屋へ戻ってリアのパジャマと下着を用意する。 用意できた所で脱衣書に戻り、まだもそもそと服を脱いでいたリアの頭をぽん、とひと撫でしてから再び浴室に入る。 そこそこ水が溜まったのを確認した所で、片腕を突っ込んで魔力を開放し一気に適温まで加熱した。 そこへ全て脱ぎ終わったリアが入って来た。 「よし。リア、ここ座れ。」 とバスチェアを指す。 素直に腰かけたリアを全身丁寧に洗ってやってから、浴槽に入るよう指示する。 いつもはリアと一緒に自分も洗って、一緒に浴槽につかるライナーの常と違う行動に、リアは不思議顔だ。 「…流石にその狭い浴槽に2人で入るのは無理だからな。」 そう言った俺に、リアはキョトンとした。 「ライナー、リア、だっこして…?いっしょ、はいろ…?」 「!!!!」 それは衝撃的な言葉だった。 これまで俺はデカい風呂にしか入った事が無いため、わざわざ浴槽内でリアを抱っこする必要など無く、思い付きもしなかったからだ。 …だが。 湯でほこほこに暖まり、全身薄っすらとピンク色に染まった可愛いリアを抱っこして入浴…。 …うん、イイ。…凄くイイ。 「リアは天才だなっ!俺は、そんな事思い付きもしなかったぞ。」 超ご機嫌で俺が言うのに、 「……?…クロスにぃ、いっしょ、…はいる、ときは、いっつ…もリア、だっこ。」 一気に俺の機嫌はMAXまで下がった。 …クロス兄!…次会った時は覚えろ。…絶対メイテ姉にチクってやる。 入寮初日、俺は誓った。 New fate 4 ◇Side:Liner END

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