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第4章ー11 進学始業式-5

リアとライナーが椅子に座ったのを確認した所で、今年からクラス委員になっているウェルザは、適当な理由を付けられ、クラスメートの後輩や、Bクラスの同級生達に引っ張られて行ってしまった。 今では先輩クラスの生徒も加わり、質問攻めに合っている。 噂の兄弟と同室になっていながら、全く情報を流してくれないウェルザ達に痺れを切らしていたようだ。 ちなみに、要領の良いサーガはすぐさまライナーの隣に座ってしまったため、難を逃れている。 暫くは美しい兄弟を鑑賞しながら、思い出し笑い等をしていたサーガだったが、リアが急にその愛らしい顔を上げ、何かライナーと話した途端、ライナーの纏う気が一気に変わった事に驚く。 リアをギュッと抱き込み、殺気ではないが余りに威圧感たっぷりのそのオーラに、サーガが何事かと声を掛けようとした瞬間、 パッ、 と、講堂内の明かりが全て消える。 一瞬の後、ワーッという歓声が沸き、消えたときと同じように唐突に講堂内が明るくなった。 「………ッ…何だ?!」 ほんの一瞬だったが、大きな魔法の波動を感じたライナーはさらに警戒を強めたが、明るくなった講堂を見て驚く。 「…こっ、これは…まさか…。」 「うん。オニイサン。式開始のセレモニーで危険はないから安心して?」 そこは先程までの講堂とは全く違う空間に変化していた。 足元には清らかな水が流れ、夜明けをイメージしたような薄紫の空には沈みかけの3つの月と、暁の星が輝いている。 リアもライナーの胸から顔を上げて、その夜明けの空と同じ色をした瞳をパチクリさせている。 そうして2人が驚いている間にも魔力による映像は続き、今は足元を流れる水が噴水のようにあちこちで吹き上がり、水飛沫が飛んでいる。 興味を惹かれたのか、リアはライナーの腕の中から精一杯小さな手を伸ばして、その水飛沫に触れようと頑張っている。 「…リアちゃんその仕草、凄く可愛いけど、それは幻影魔術だから触れないんだよ。」 サーガがリアに説明した瞬間、 『そうかな?』 不思議な声が聞こえたかと思うと、リアとライナーの足元から、つぶらな瞳をしたイルカが顔を出した。 リアが驚いてライナーにしがみ付くと、 『大丈夫。僕は怖くないよ?…はい、これ。あげる。』 そう言って口に咥えていた小さな籠をリアに差し出した。 一瞬ライナーを見たリアが、彼が軽く頷いたのに、そっとイルカに向かって手を差し出す。 渡された小さな籠の中には、色取り取りの…石?…が沢山詰まっていた。 きらきらと光るそれを見て、リアは小さくお礼を言った。 「…あり、がと……。」 『どういたしまして。リア・クランツ君、ライナー・クランツ君、君達を歓迎するよ。取り敢えず、また後でね。』 そう言うと、イルカは一度大きくジャンプをして、また水の中へ帰って行った。 イルカが水に潜ると、辺りの魔法は少しずつ薄くなり、やがて元の講堂へと戻った。 それから少しの間があり、前方のステージ付近が騒めきだした。 今度は何だ、とライナーがステージを見ると、丁度一人の男が舞台袖から出て来た所だった。 「やあ、みなさん。カルフィール魔法学校へお帰りなさい。そして、新入生と編入生の皆さんは、ようこそ。ここでの数年間が皆さんの中で有意義な物になるよう、祈っているよ。自己紹介が遅れたね。知っている人もいるけれど、僕は5年生で生徒会書記のルマーシェ・ビランです。召喚Aクラスに所属しています。特に今年の編入生の子は全員召喚クラスみたいだから、よろしくね。」 声を聴いてすぐに、それが先程のイルカと同じものである事に気付いたライナーは、嫌な予感を感じるのだった。 進学始業式 5 END

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