27 / 163
第4章ー13 進学始業式-7
そうこうしている間に式は進み、最後にシェルバ・メルケルの教え子であり、この学園の理事長でもあるムーガ・ハプソン理事長の挨拶があり式は終了となった。
驚いた事に、理事長のパプソン家も始祖を辿ればマルシエにたどり着くという。
リア達が学校へ行く事を決めた後、理事長は一度シェルバと共に泉に現れているため、リアは勿論キリエ達とも会っている。
その時一緒にリアの担任となる理事長の息子、マーク・ハプソンも紹介され、家族達に質問攻めに合っていた事も追記しておこう。
ただし、泉では幻影としか会っていないため、リアもライナーも生身で顔を見たのは今日が初めてである。
余談であるが、あの七色の泉の水には、遠く離れた者と水を通じてコンタクトが取れる水鏡のような力が宿っている。
その昔シェルバの始祖がマルシエを出る際、マルシエに残る友人達との連絡を取る為に持ちだした「家宝」でもある泉の水を利用して、シェルバはあの森へやって来たのだ。
マルシエ滅亡が大陸史512年の事。
シェルバの始祖はそれよりも300年以上も前に国を出ており、それを換算すると、泉の水は約1200年以上もの間、大切に受け継がれて来た事になる。
この事実と、聖獣フェンリルの契約主である事を踏まえ、キリエは本来であれば、絶対に賛成しなかっただろうリアとライナーの就学を認めた。
そのキリエも、リアが周りと仲良くやれるか、ライナーが上手く擬態し通せるか等の心配はしていたが、まさか人と自分達との生態系の違いや、文化の違い等といった根本的な部分で、これほど苦労するとは考えていなかっただろう。
泉の水はもちろんリア達も持たされている。
不思議な事だが、この水の効果は毎月の泉の水を汲んだ日と同日にのみ、発揮される。
例えば花の月・1日に汲んだ水は、その後は毎月1日にのみ、その効果を発するのだ。
リア達が泉の水を汲んだのは、先月の1日と20日の2回なので、毎月1日と20日がキリエ達と連絡が取れる日となる。
当初キリエを筆頭に家族達は、毎日水を汲みに行き、毎日話が出来るようにと考えていたが、管理が難しすぎるとライナーが猛烈に反対し、2日のみとなった。
今頃は何とか日数を増やさせる理由を、家族全員で考えているに違いない。
ともあれ、これで式は終了だ。
面倒くさいことに巻き込まれない内に戻ろうと、ライナーはリアを抱いて立ち上がるのだった。
進学始業式 7 END
ともだちにシェアしよう!