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第4章ー15 召喚士クラス-1
今日の予定は進学始業式だけだった為、ライナーはリアを抱いて足早に寮へ戻る道を歩いていた。
寮への道は、石畳になったメイン通りと、森の小道を行く散策路の2本だ。
メイン通りを使えば寮まで10分程。
散策路は倍の20分位かかるが、リアが森の道を喜ぶので、ライナーは散策路の方を選択した。
もちろん、メイン通りは人目が煩わしかったと言うのも理由の一つだ。
ちなみに、ウェルザはまだ他の生徒達に捕まっていたし、リアの攻撃でどこか遠くへ旅立って行ったサーガには、ライナーが一応声を掛けたが無反応だった為、放置する事にしたようだ。
足早に散策路に入りわざと散策路から逸れ、人の気配はもちろん、講堂からずっと追いかけて来ていたルマーシェの気配も感じなくなった所で、ようやくライナーは歩くスピードを緩めた。
そうして、森の小道に入った時から沢山の地精霊達に手を振られたり呼ばれたりして、目をあちこちとさせ、降りて遊びたそうにしていたリアに声をかけてやる。
「リア、降りて少し遊ぶか?」
「…ん。…リア、おりる。」
「それと、もう聖獣達も呼んでいいぞ。」
「…ほん、と?……シェラ、エスティ、…リアのとこ、きて。」
嬉しそうに頬をバラ色に染め、聖獣達を呼ぶリアは本当に愛らしい。
ただその召喚方法は、召喚陣も供物も無い、名前を(しかも愛称で)呼ぶだけのシンプルな物で、他の召喚士には絶対真似できない方法だ。
それでも聖獣達は少しの間も置かずに現れた。
「…主。式は無事終了したのですね。」
ペガサスは主に変わりがないのを確認してほっとした様子だ。
「にゃあ。リアー。エスティ、寂しかったにゃ。」
まだ子猫のケット・シーは寂しかったと訴え、さっそくリアの肩に乗って優しく撫でてもらい、ゴロゴロ言っている。
聖獣2体が合流したのを見計らい、近くに群生していたザキソウの地精霊が声をかけて来た。
『ユーグの子、あそぼう!』
『あそぼう!』
周辺にあったハナガタバミとハマユウの精霊達も一緒になり、ライナーが魔力で作った水風船で遊んだり、子猫のエスティをハマユウの花でじゃらして遊んでいた。
基本的に地精霊は本体である花や木から離れられない為、遠くにある草花の精霊達は手を振ったり、本体を揺らしたりしてリアを誘っている。
そうして1時間程遊んだ頃、遠くに人の気配を察したライナーと精霊達の警告により、最後に精霊達が自身の本体である草花で花冠を作りリアにプレゼントしてくれて、この日は打ち切りとなった。
ピンクと白の花冠を小さな頭に乗せたリアは、ライナーに手を引かれて寮へと向かう道をご機嫌に歩いている。
いつもよりピンクに染まった頬がリアを更に愛らしく魅せ、精霊たちを更に魅了する。
寮へと戻る散策路には他にも沢山の精霊達がおり、桃の木の精霊は甘く香るその実をリアに差し出し、山葡萄の精霊はたわわに実った紫色の葡萄をくれた。
沢山の贈り物のおかげで、小さなリアの両手では持ちきれず、今はペガサスの魔力で宙に浮かんでいる状態だ。
寮が近くなった所で、ライナーはリアと繋いでいた手を離して抱き上げる。
更にストールを被せる事も忘れない。
そうして準備万端で散策路を出てメイン通りに戻った所で、
「「あーーっ!!」」
タイミング悪く、同室の2人に見つかったのだった。
…しかも、見間違え出なければ、もう2人…
「……ふえ、てる……。」
…そうだな、リア。
召喚士クラス 1 END
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