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第4章ー18 召喚士クラス-4
「…。リアはどんな精霊からも好かれるからな。この花冠もその果物も全て、あの散策路周辺にいた地精霊たちからリアへの贈り物だ。」
ウェルザの質問に、しばらく無言でいたリアとライナーだったが、やがてライナーがぽん、とリアの頭に手を乗せて答えた。
「…たっ、確かにリア君が凄く可愛いくて精霊達の好みなのは分かるんだけど…、…あそこに住む精霊達は気難しいので有名なんだ。」
「そうそう!精霊達が気に入らない人間があの道を通ると、迷わされて出れなくなる事もあるから注意しなさい、って通達が出る位にはね~。そんな精霊達から贈り物まで貰っちゃえるなんて、やっぱりリアちゃんはサイコーだねっ!!」
やっと復活したサーガが、ウェルザの話を補足する。
「良かったらコレ使って?…ずっと浮いたままって言うのも何だし」
サーガが話している間にウェルザが持ってきたのはフルーツ用の大き目のバスケットと、フルーツ皿だ。
「…ああ、すまないな。」
ライナーの言葉が終わると同時に、浮いていた果物達は綺麗にバスケットと皿に納まっていた。
「「「「…。」」」」
「…えっと、今のそれって誰の力?…ぶっちゃけ、おにーさんって凄い魔術師ッスよね?リアちゃんも。」
「…凄いかどうかは誰かと比較した事が無いから知らん。…それと、今の力は俺じゃない。」
妙な呼び方をするなと何度注意しても直らない…と言うか、直す気が無さそうなサーガをひと睨みしてライナーが答える。
余計な事を言ってライナーの怒りを買いそうなサーガに変わり、ウェルザが続ける。
「…って事はやっぱり、その…えっと、実はずっと気になっていたんだけど、その2つの光は…リア君の召喚獣なんだよね?」
「うんうん、そうそう。俺もチョー気になってた!すっごく強烈な存在感だよねぇ!」
これに関してはライナーの更なる氷点下の睨みが返って来た。
……………怖っ!!
だけど2人は横で固まっている後輩2人の為に頑張った。
「しょっ、召喚獣と言えば、俺達もずっと紹介したいと思っていたんだけど、中々オニイサン達リビングに出て来てくれないから今日まで延びちゃったけど…なっ。」
そう言ってウェルガに視線をやるサーガ。
「う、うん。僕達の召喚獣を紹介するね。」
そう言ってリビングの中央、共有のソファの前にあったテーブルを除け、その下にひいてあったフロアマットを除けると、そこには床に直接刻み込まれた召喚陣があった。
そうして。
まずはウェルザが召喚陣の中央に立ち、召喚を始めた。
召喚士の資質がある事は分かっていても、現時点では召喚獣を持たない下級生たちは興味津々だ。
リアも顔を上げて初めて見る召喚陣を不思議そうに見つめ、何かをしようとしているウェルザをじっと見ている。
一方、人間が使う召喚陣を初めて見たライナーは、一瞬だけ冷めた目をした後、取り敢えず何も言わずリアを腕にしっかりと抱いたまま成り行きを見守っている。
…それにしても長い。
うんちゃら、かんちゃらと。
いつ終わるんだ、この呪文?は?と、ライナーが苛立ち始めた時、
長々とした前口上が終わり、やっと最後の一文に入る。
「我、汝の契約主なり。我が声に答え、出でよ。清らかな泉より生まれ出でしウンディーネの子、リーナ!」
すると召喚陣が青く輝き、一瞬の後、小さな羽を持ち、青い髪・青い瞳をした体長60㎝程の少女型の下級精霊・ピクシーが現れていた。
例外を除き一般的な下級精霊には擬態をする力が無いため、基本そのままの姿で現れる。
「この子はリーナ、僕のあい…ぼ……う………って、ええええええーーっ!?ちょ、ちょっ、リーナ?」
そうしてウェルザがそのピクシーに近づき、リア達に紹介しようとした所で、出現と同時に召喚主であるウェルザそっちのけで、ピクシーことリーナは、ライナーの腕の中でそっと召喚の様子を伺っていたリアに向かって、一目散に飛んだ。
過去一度もこのような事は無かったため、ウェルザは目を丸くして驚いている。
驚きに声を失っている間にも、リーナはリアに向かって身振り手振りで何かを伝えるような動きをしている。
最初はリアも驚いていたが暫くの後、ほわり、と花の蕾が綻ぶ様に淡く微笑んだ。
「「「「…。」」」」
………時が止まった………。
…とライナーは思った。
いっそこのまま自室に帰ろうかと考えていた時、
「リアちゃん、キレー!超キレー!そんでもって可愛い~!!!!」
アホが雄叫びを上げた。
…気持ちは理解できなくもないが、リアが怯えている。
ライナーは膝の上のリアをギュッと抱きしめ直した。
ピクシーは驚いて、召喚主の元へ飛んで行った。
…そこそこの関係は築いているようだ。
他の3人もサーガの余りの大声にビクッとし、正気を取り戻したようだが、その顔は倒れるのでは無いかと思う程真っ赤だ。
「……っと、とにかく、この子が僕の相棒、リーナだよ。…こっ、これからよろしくねっ!」
むりやりウェルザが締め、次はサーガだと言って召喚陣の方へとその背中を押すのだった。
召喚クラス-4 END
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