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第4章ー20 召喚士クラス-6
ペガサスを前に、石の様に固まって動きを止めてしまった4人。
そして、その4人を見てリアが驚いている。
ライナーはふう、と一つ息を吐くと、右手の人差し指をピッと動かし、4人の周りにある空気中の水分を少しだけ集めると、その水をそのまま4人の顔へ向かって跳ねさせる。
ピチャッ!
「「「「…わっ!!!!」」」」
「…いきなり全員で止まるな。リアが驚いているだろう。」
その驚きが喜びに変わる類のものなら歓迎するが、戸惑いや不安を生むものであれば即排除する。
ライナーは安定のリア至上主義だ。
もちろんそれは家族全員に言える事であり、仮にこの場にいたのがクロスなら氷の刃が、キリエなら稲妻が落ちていたかもしれない。
「あっ、ご、ごめんね?えーと、そっちの子猫がケット・シーで、…あ…と、…その……上位聖獣のペガサス、様…で合っているかな?」
少し不安そうなリアは、ライナーの胸辺りにぎゅっ、としがみ付いた状態で、こくり、と頷く。
「…あ、あはは。そっかー。やっぱりペガサスね~。で、お膝の子猫ちゃんが、ケット……シー………って、ん?……子猫?………こねこーぉぉぉぉ!?」
思わず叫んでしまったサーガに、またライナーのキツイ視線が送られるが、サーガの心情としては、
…いや、でも、そんな!……子猫~っ!?
という感じなのである。
何故なら、「聖獣も精霊も召喚できるのは成体に限る」というのが鉄則だと学校で習っていたし、実際子供の聖獣を見た事など無かった。
ペガサスの強烈な存在感に圧倒されて見逃していたが、これは常識を覆すという意味で、驚かずにはいられない。
改めてその事実に気付いたウェルザも、また驚愕に固まっている。
後輩2人は、まだ意味が良く分かっていないらしく、不思議顔だ。
ちなみに下級生は、新入生の方が名をラステイ・クロウと言い、カルフィン南部出身で召B-1クラス。
2年への編入生が、ハミール・レジスタ、召A-1クラス、南の大国・ラマンチェス王国があるラムセール大陸からはるばるやって来た珍しいタイプだ。
さて、話を戻そう。
ライナーは再び固まってしまった同室者達と後輩2人を強い瞳で見据え、
「リアと聖獣達の事については、何も聞くな。」
それだけ言うと口を閉ざした。
「「…。」」
「「…。」」
ライナーの放つオーラに圧倒されて暫くは誰も何も言えなかったが、やがてニッ、とサーガが笑う。
「…了解。“今は”聞かないよ、お前達もいいなっ?」
「「…はい。」」
「うん、わかったよ。」
「ん、ならこの話はここまで~。ウェルザ、お茶冷めちゃった~。もっかい淹れて~?」
いつもの調子に戻って話すサーガに、ウェルザも少し笑うと、
「そうだね、どうせリーナ達の分も淹れようと思ってたし。ついでにみんなも分も淹れ直すよ。」
そう言って簡易キッチンの前に来た所でウェルザは振り返り、
「…えっと、聖獣さん達も一緒にどうかな?…って、お茶飲めるのかな?リーナ達は喜んで飲むんだけど…、どうかな?」
問いかけられたリアは一瞬ぽかん、としていたが、意味が分かると、ぱあぁぁ、っと、本当に花が咲くように満面の笑顔を見せた。
!!!!
ふたたびピキッ、と固まる4人はそのままに、ライナーに膝から降ろしてもらうと、慌てて自室へ戻って行った。
そんなリアを、ライナーは優しい目で微笑ましそうに見ている。
すぐに戻って来たリアは、ままごとのような小さなカップと、広く口が開いたスープカップのような器を、簡易キッチンにいるウェルザの所まで持って行くと、これまた満面の笑みで差し出した。
そのまま隣でにこにこと機嫌良く、ウェルザの前にある茶葉やブレンド器具を眺めている。
一方のウェルザは条件反射で差し出されたカップ類は受け取ったものの、初めて見るリアの満面の微笑みと、無邪気な愛らしさの威力に顔を真っ赤にして、とうとう、
「…………ウッ!……」
と、口を押えてその場でしゃがみ込んでしまった。
そんなウェルザを見て、リアはびっくりしていたが、小さな顔を少しかしげて何かを考え、やがて思い立ったように自分もその場にしゃがみ、下から覗き込むようにして、その大きな瞳でウェルザをじっ、と見つめる。
「……//////。」
「あー、リアちゃん、リアちゃん!それ、軽く拷問だから~!」
お願い、もうやめたげて!とサーガ。
後輩2人も、若干気の毒そうだ。
ライナーは面白そうに人間達が慌てふためく様子を見ている。
「ちょっ、オニイサン、笑ってないで何とかしてくださいよ~💦」
とサーガに気持ち悪く泣き付かれて、やっと口を開いた。
「リア、渡したのなら戻っておいで?」
ライナーの呼びかけにリアは振り向きライナーを一瞬みたあと、
もう一度ウェルザを見たが、反応が無いのでまた首をかしげて不思議そうにしている。
「こら、リア。キッチンは危ないから近寄ったらダメだとメイテ姉に言われていたろう?」
再度のライナーの言葉にリアは、はっとしたように立ち上がろうとしたが、それより早く傍まで来ていたライナーにひょい、と抱き上げられた。
そしてそのまま元のソファまで連れて行かれ、今度はライナーの膝の上で向か合うように座らされる。
「リーア?」
「…ライ、ナー。……ごめんな、さい、なの……」
しょんぼりとしたリアの様子に、ライナーはくす、と笑う。
そうしてリアの頬を両手で包んで上を向かせ、その小さな額と己の額をぴと、と合わせてリアの少し潤んだ瞳を優しく見つめる。
「…ん。リアはちゃんと御免なさいが出来るお利口さんだな。」
そう言って、ライナーは優しいキスを3度ほどリアの愛らしい唇に贈り、最後に額にキスをした所で、小さな頭を胸に抱き寄せ、ぽんぽん、とその頭を撫でた。
その様子を見ていた残りの3人は言うまでもなく
「「「……////。」」」
こんな感じで親睦会は終始、クランツ兄弟に他の4人が振り回される形で終わりを迎えたのである。
召喚クラス-6 END
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