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第4章ー21 閑話休題-1 Side:ライナー
騒がしい親睦会は昼過ぎまで続いたが、今はもうお開きとなり、後輩たちもそれぞれの部屋へ帰って行った。
リアはハーブティのカップを両手に持ったままライナーの胸にもたれて、うとうとし始めている。
そのリアの小さな膝の上では、子猫のエスティが丸くなって眠っている。
…何とも愛らしい図だ。
昼の食堂は確か14時までだったが、まあ俺達にはあまり関係ないし、リアはこのまま寝かせてやった方が良いだろう。
リアの手からカップを取り上げ、エスティごと横抱きにして抱き上げた。
自室へ向かおうとした所で、同室2人が声をかけて来た。
「あれれ、リアちゃん寝ちゃったの~?……可愛い///」
「あの、良ければお昼ご飯、何か持って帰りましょうか?」
「いや、飯はいい。…代わりにお茶をもう1杯、淹れておいてくれるか?」
リアの寝顔を気色悪い顔で覗きこんでいるサーガは無視して、ウェルザにのみ返す。
「あっ、はい!えっと、なら冷めても美味しく飲めるのを…」
「ああ、頼む。そのテーブルに置いておいてくれればいい。」
そう言い残して、今度こそ俺は自室のドアを開けた
そのままリアをベッドへ寝かせると、皺になったら困る“制服”のスラックスを脱がせ、リアが嫌がっていた“クツシタ”も取ってやった。
それからシャツのリボンを解き、四苦八苦しながら小さなボタンを3つ程外してやると、最後に額に一つキスを落として、俺は中央に配置されたソファに深く腰掛けた。
ちなみに、部屋に備え付けられた家具は俺とリアが過ごしやすいよう、配置を全て変えた。
当初は中央部のドアを挟んで左右対称に配置されていたそれらは、今は窓側にデスクが2つ並び、バスルームへの扉手前にはベッドが2台ピッタリくっついて並んでいる。
その隣にワードローブを配置、そして中央の空間にソファセットを置いた、俺的にパーフェクトな配置になっている。
「………ふぅ……」
『…随分とお疲れのようですね?』
大きく息を吐き出した俺に、ペガサスが心話で話しかけて来た。
「…あなたから俺に話しかけて来るなんて、珍しいですね?」
『……あの精霊達。…あの人間達にとても大切にされている様です。』
「…わかっています。俺は今でも人間は好きじゃありませんが…少なくともあいつ等は今のところ俺の敵では無いでしょう。」
『…なら良いのです。私も正直なところ、人は好きになれません。…しかし、憎しみに囚われ、見るべき物が見えなくなってはなりませんよ。』
「……。」
『……さあ、あなたも少しお眠りなさい。ここは私の結界で守られた場所。何人たりとも侵す事はできません。本体に戻りゆっくりと休むと良いでしょう。』
…擬態を解くと、再度完璧に擬態するまでに1分はかかる。
その1分が命取りになる事も考え、例えペガサスの結界の中であっても、俺はここへ来て一度も擬態を解いていない。
しかし、ペガサスがこう言うのであれば、何かあった時も彼が対処してくれるという意味だろう。
ペガサスの言葉に俺はそれまでの緊張を解き、着にくく脱ぎにくい制服を何とか脱いでから擬態を解除した。
…そのまま本体に戻ると破れるからな。
そうして、ゆったりと着なれた服を着るとリアの隣に入る。
ベッドが揺れた一瞬、リアがもぞもぞ動いたが、俺の左側にぴったりくっついた所でまた動かなくなった。
それを見て俺も目を閉じた。
閑話休題 1 ◇Side:Liner
END
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