35 / 163

第4章ー21 閑話休題-1 Side:ライナー

騒がしい親睦会は昼過ぎまで続いたが、今はもうお開きとなり、後輩たちもそれぞれの部屋へ帰って行った。 リアはハーブティのカップを両手に持ったままライナーの胸にもたれて、うとうとし始めている。 そのリアの小さな膝の上では、子猫のエスティが丸くなって眠っている。 …何とも愛らしい図だ。 昼の食堂は確か14時までだったが、まあ俺達にはあまり関係ないし、リアはこのまま寝かせてやった方が良いだろう。 リアの手からカップを取り上げ、エスティごと横抱きにして抱き上げた。 自室へ向かおうとした所で、同室2人が声をかけて来た。 「あれれ、リアちゃん寝ちゃったの~?……可愛い///」 「あの、良ければお昼ご飯、何か持って帰りましょうか?」 「いや、飯はいい。…代わりにお茶をもう1杯、淹れておいてくれるか?」 リアの寝顔を気色悪い顔で覗きこんでいるサーガは無視して、ウェルザにのみ返す。 「あっ、はい!えっと、なら冷めても美味しく飲めるのを…」 「ああ、頼む。そのテーブルに置いておいてくれればいい。」 そう言い残して、今度こそ俺は自室のドアを開けた そのままリアをベッドへ寝かせると、皺になったら困る“制服”のスラックスを脱がせ、リアが嫌がっていた“クツシタ”も取ってやった。 それからシャツのリボンを解き、四苦八苦しながら小さなボタンを3つ程外してやると、最後に額に一つキスを落として、俺は中央に配置されたソファに深く腰掛けた。 ちなみに、部屋に備え付けられた家具は俺とリアが過ごしやすいよう、配置を全て変えた。 当初は中央部のドアを挟んで左右対称に配置されていたそれらは、今は窓側にデスクが2つ並び、バスルームへの扉手前にはベッドが2台ピッタリくっついて並んでいる。 その隣にワードローブを配置、そして中央の空間にソファセットを置いた、俺的にパーフェクトな配置になっている。 「………ふぅ……」 『…随分とお疲れのようですね?』 大きく息を吐き出した俺に、ペガサスが心話で話しかけて来た。 「…あなたから俺に話しかけて来るなんて、珍しいですね?」 『……あの精霊達。…あの人間達にとても大切にされている様です。』 「…わかっています。俺は今でも人間は好きじゃありませんが…少なくともあいつ等は今のところ俺の敵では無いでしょう。」 『…なら良いのです。私も正直なところ、人は好きになれません。…しかし、憎しみに囚われ、見るべき物が見えなくなってはなりませんよ。』 「……。」 『……さあ、あなたも少しお眠りなさい。ここは私の結界で守られた場所。何人たりとも侵す事はできません。本体に戻りゆっくりと休むと良いでしょう。』 …擬態を解くと、再度完璧に擬態するまでに1分はかかる。 その1分が命取りになる事も考え、例えペガサスの結界の中であっても、俺はここへ来て一度も擬態を解いていない。 しかし、ペガサスがこう言うのであれば、何かあった時も彼が対処してくれるという意味だろう。 ペガサスの言葉に俺はそれまでの緊張を解き、着にくく脱ぎにくい制服を何とか脱いでから擬態を解除した。 …そのまま本体に戻ると破れるからな。 そうして、ゆったりと着なれた服を着るとリアの隣に入る。 ベッドが揺れた一瞬、リアがもぞもぞ動いたが、俺の左側にぴったりくっついた所でまた動かなくなった。 それを見て俺も目を閉じた。 閑話休題 1 ◇Side:Liner END

ともだちにシェアしよう!