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第4章ー25 初めての授業-1 ◇朝の情景

大陸史:1418年 水の月・12日 カルフィール魔法学校では今日から今年度の本格的な授業が開始となる。 AM6:00 目覚まし時計が鳴る前に目覚めたライナーは、まだぐっすり眠っているリアを確認すると、その愛らしい額に小さくキスをして腕に抱いていた小さな頭の下からそっと腕を抜き、起こさない様静かに寝台を降りた。 ちなみにケット・シーはリアの頭の付近で丸くなっており、ペガサスは眠る時の定位置である、ライナーとは反対側のリアの隣で優雅に横たわっている。 ライナーが起き上がった時、ちら、と視線を向けたが、特に何も言わずまた目を閉じた。 本体からゆっくりと人の姿へと擬態しならがら、ライナーは優しい目で寝台を見ている。 純粋で愛らしく、何よりも大切なリア。 尊敬する上位聖獣ペガサス。 そして、マルシエ滅亡前の卵から孵化した新しい家族、エスティ。 自分の大事な物ばかりが集まった寝台は、まるで聖地のようだ、と柄にもない事を思っていた。 擬態が完了すると、ライナーはワードローブから制服のカッターとスラックスを出す。 カッターシャツの小さなボタンを魔術ではめ、後はネクタイとブレザーを着るだけになった所で洗面所へ行き、洗顔を済ませ軽く身なりを整える。 AM6:30 そろそろリアを起こす時間だ。 …リアの寝起きは、いつでもどんな時でも物凄く可愛い。 100回見たら100回分の可愛さがある。 何度見ても飽きないし、何度でも見たいとライナーは真面目に思っている。 今朝の可愛さを堪能すべく、ライナーは寝台へ戻りリアの隣に左肘を付いた状態で横たわる。 そうして、右手の甲でリアの柔らかい頬を優しく撫でたり、薄く開かれた唇にそっ、と触れながら優しく声をかける。 「リーア、リア。そろそろ起きれるか?」 髪と同じ色をした長い睫がふるふる震え出したら、覚醒が近い合図だ。 「…ん、……らい、なー………?」 小さな声が聞こえた所で、ライナーはリアに掛けてやっている薄手の寝具ごと一度リアを抱き上げ、ベッドヘッドへ背を預ける形に座りなおした己の膝を、向い合せにまたがせる形でリアを膝に乗せた。 覚醒しきれていないリアは“ふにゃふにゃ”で、ライナーにされるがままだ。 「リーア、今日から授業、頑張るんだろう?」 そう言いながらライナーは、リアの小さな頭のてっぺん、米神からこれまた愛らしい耳へと、優しいキスを幾つも送る。 すると。 「……ん…やぁ、らい、なー……りあ、またねちゃう、…からやめて、なの……。」 可愛い抗議が返って来た。 …なるほど。 確かにコレはリアを寝かしつける時にやるキスだったな、と思いライナーはキスを止める。 「すまない、リア。コレは寝る時用のキスだったな。…なら、リア、リアが俺におはようのキスをくれるか?」 ライナーの言葉に、リアはゆっくりとその瞳を開いてライナーをその視界に捉えた瞬間、ほわぁ、と実に無邪気に微笑んだ。 「…ん。」 細い両手でライナーの肩に掴まって伸びあがると、 ちゅっ。 とライナーの唇に可愛いキスをした。 …彼らの朝はいちゃいちゃから始まる。 初めての授業 1 ◇朝の情景 END

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