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第4章ー27 初めての授業-3 ◇争奪戦?

一方、2人が去った職員室。 …とは言っても教師たちにはそれぞれ個室が与えられているため、室内には教師たちのデスクがある訳では無く、いくつものソファセットが置かれ、教師の為の休憩場所のようになっているのだが。 そこには珍しくかなりの教師が集まって来ていた。 実は教師たちの間でも噂だけが聞こえ、姿を中々見せないレアキャラ扱いをされていたリアとライナーである。 その為、兄弟が揃ってここへ来ると聞いた、担任を持っていない教師の殆どが集まったと言う訳だ。 ちなみに今日リアとライナーがここへ呼ばれたのは、他の編入生は皆早くに入寮を済ませ、それぞれ担任に挨拶も終わっていたのだが、2人だけはギリギリに入寮したうえ、ほとんど部屋から出てこなかったため、やむを得ず今日ここへ呼び出したのだ。 「………素晴らしい。……想像以上の……いや、……想像を絶する最高の素材だ…。これは早急に部長のルマーシェ君と相談して、ぜひとも我が芸術部に入ってもらわねば!」 薬学専門講師で、芸術部顧問でもあるイグナー・セレスが感動したように叫ぶ。 すると、となりに座っていたルーン語講師で、戦闘部顧問のマジェス・リードがすかさず返す。 「……フッ……その目は節穴か?…あの兄の周りにまき散らすような強烈な魔力、…何よりあの召喚獣の力を感じなかったとは…ハッ!!なよなよした芸術なんかに現を抜かしているからそうなるんだよっ!とにかくあの2人は戦闘部がもらう。」 同じ東のリースウェイ王国出身で、共にこの学校の同期の卒業生。 しかも主席と次席という関係で、在籍当時からライバル同士だった2人は、何の因果か共に教師になってからもそれは続き、些細なことで反発し合う二人は、今ではカルフィール魔法学校の名物教師だ。 そんなこんなで、リアとライナーのあずかり知らぬ所で2人の争奪戦が始まっていた。 さて、話を2人に戻そう。 「えーと、改めて確認するけど、リア君は個人授業じゃなくてOKなんだね?」 マークの言葉に、リアは不安そうな顔はしているものの、ライナーの腕の中でこくり、としっかり頷いた。 「そっか。ありがとう、リア君。僕もしっかりフォローするから頑張ろうね。でも無理な時は我慢しなくていいからね。…さて、ここからが召喚クラスのフロアだ。…リア君、お兄さんから降りて一人で歩けるかな?」 その言葉にリアはびくん、と大きく体を揺らしたが、ライナーを見つめて頷く。 リアの無言の訴えに、ライナーは最後に額と瞼にキスをして、腕から降ろしてやった。 ただし、リアが降りてすぐに2人の手はしっかりと繋がれたが。 召喚士フロアに入ってすぐ。 わらわらとリアの周りに召喚獣達が寄って来て、あっと言う間に囲まれてしまった。 リアは大きな目をぱちくりとさせてはいるが、嫌がってはいないようだ。 『ユーグの子~待ってたよ~!』 『遊ぼうよ!』 『お会いできて光栄です。』  …etc… その様子に教師2人は驚きに目を見張り、ライナーは苦笑い。 それぞれの召喚獣のマスター達も固まっている。 そして。 『お静かになさい!そんなに一度に来られたら、主が困るでしょう!主に近寄るな、とは言いません。ただ、一斉に来ることは禁じます。…そうですね…2人ずつにしましょう。まずは今日中に皆で話し合い、順番をお決めなさい。…いいですね?』 ペガサスは半キレしていた。 ただ、以前にも迷いの森で同じような事があったため、その指示は的確だ。 『『『『…!!!わかりました~!ごめんなさ~い!』』』』 蜘蛛子を散らすように、取り敢えず召喚獣達はそれぞれのマスターの元へ帰って行った。 ちなみにペガサスの姿は、リアとライナーそしてケット・シーのエスティ以外には大きな光にしか見えていないため、今のやりとりは、ただ威嚇するように光が大きくなって召喚獣達を追い払ったように見えただけだ。 「…凄まじいな。」 ぽそりとミルアムが呟く。 「…本当に。マスター以外にあんなに懐いた召喚獣は初めて見たよ。…ああ、あとから僕の召喚獣も紹介するね。…ちょっと大きいからここでは召喚出来ないんだけど。」 …実際に僕は予め彼らの事を知っていたから“マシ”だけど、事情を知らない者に与える衝撃は凄いだろう… そこまで考えた所で、マーク・ハプソンは取り敢えず気を取り直し、三人を促し、クラスルームへと足を進める事にした。 「はい、着いた。ここが今日からリア君の教室だよ。」 初めての授業 3 ◇争奪戦? END

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