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第4章ー29 初めての授業-5 ◇1時間目:HR-2
あの後、サーガとウェルザ二人がかりで何とかライナーを送り出し、何とかHRがスタートした。
リアは今、自分の席にちょこんとお行儀よく座ってはいるが、緊張のためか極上といえる美しい顔からは表情が消え、いつもより更に白く見える肌が、リアを作り物のようにみせている。
余談であるが、召喚クラスは人数が少ないことと、召喚獣を連れている者に配慮して、教室も広く机や椅子も大き目に出来ている。
机は幅120cm、奥行70cmあり、椅子も座面までの高さが70cmと、少し高めだ。
小さなリアにその椅子はちょっと大き過ぎる為、足が地面に届かず、ぷらん、となった状態で、本当にお人形のようだ。
そんなリアを励ますように、サーガの召喚獣・フェイトはリアの右手をそっと繋ぎ、ウェルザの召喚獣・リーナもリアの机に腰掛け、心配そうに様子を伺っている。
そしてもちろん、周りの者達には光にしか見えていないリアの召喚獣達も、必死だ。
リアの右側に寄り添うペガサスはその大きな羽でリアを包み込むように抱きしめ、ケット・シーはリアの膝の上ですりすりしながら、時折リアの小さな手を慰めるように舐めている。
左右にはサーガとウェルザが、リアの机とピッタリとくっ付けて座っており、フォロー体制は万全だ。
「じゃあ改めて。これから1年間、僕が君たちの担任となります。マーク・ハプソンです。担当教科は魔術基礎ね。じゃあまずはセオリー通り、自己紹介から始めようか。」
◇Side:オフェリア
………〇〇……〇、〇〇……
「じゃあ最後はリア・クランツ君ね。…リア君?」
……とお、くで、だれ…か、……おはなし、してる……。
ライナーが、……居なくなって、りあ、と、…しぇらと、…えすてぃ、3人だけ、…になっちゃった。
……いろんな、けはい。…いろ、んな、……まほう…?の、…におい……りあ、……きもち、わるい………
でも、りあ、……がんばる、ゆった、から……。
ぎゅうぅぅ、っと、しぇらに、だきついて、……きもち、…わるい、の、……と……さみし、い……の、がまん……。
「……ちゃん、……リアちゃん!」
「…ア君………リア君!…大丈夫?」
…だぁれ?……なぁに?…りあ、……いま、いっぱ……い…、がまん……して、るの………
『……主?…昨日イプピアーラの子と練習していたでしょう?』
『にゃあ!そうだよ、リア~、頑張るにゃ~。』
『…しぇら、えすてぃ……』
『うん。ボク達はリアの傍にいるにゃ!』
『そうですよ、主。…我らを紹介してくれますか?』
「……ん。……りあ、…がんば、る………」
Side:Ophelia END
「リアちゃん!良かった。寝ちゃったのかと思ったよ。」
「…リア君、良かった。大丈夫?…お話、出来る?」
やっと顔を上げたリアに、サーガとウェルザはほっとした顔だ。
「ん……おはな、し、…できる」
それを見ていたマークも安心顔だ。
…なにしろ、リア君に何かあったら、それこそ何が起こるかわからないからね…
…あの過保護な保護者達全員で乗り込んで来そうだもの……。
でも、まあ…過保護になるのも仕方ないか…この美貌とこの可愛さは、反則的だからね…
などとマークが考えている間に、リアは決心したようで、椅子から降りて立ち上がっていた。
大きな目を潤ませ両手を胸の前でキュッと組んだ、まるで可憐な少女のようなリアに、サーガやウェルザはもちろん、クラスメイト達も見とれるように見守りながら、リアの言葉を待っている。
「………りあ、くらん、つ。……です……。」
それだけ言うと、右の光に抱き着つくような仕草をしたリア。
「…………しぇら。」
呼び声に答えるように、光が強く光った後、リアに抱き着かれた状態の擬態したペガサスが。
!!!
「……えすてぃ。」
こちらもリアの呼びかけに反応し、リアの小さな肩に乗ったケット・シーが現れた。
!?!?!?
「……りあ、と、…しぇら、と、えすてぃ。……よろ、しく……です……。」
そう言ってリアはぺこん、と可愛いお辞儀をした。
クラスメイト達の反応は、リアの召喚獣を知っていた組と、初めて見た組の真っ二つに分かれた。
「「「………。」」」
ウェルザはぽけっ、と呆けている三人を見てつい昨日の自分達を見ているようで恥ずかしかった。
…僕もあんな顔をしていたんだろうな……////
ペガサス達を凝視している生徒達にリアが不安を感じるギリギリのタイミングで、サーガが声をあげる。
「リアちゃん、頑張ったね~!!ちゃんと紹介出来てたよ?リアちゃんはちょっと人見知りさんだけど、みんな仲良くしてね~」
その声に皆我に返り、不安そうに揺れるリアの瞳を見ると慌てて、
「「「は~い!」」」
と元気に返事をしたのだった。
その様子を担任のマークは、
……案外、いいクラスになりそうじゃないか。
と、微笑ましく見守っていた。
初めての授業-5 ◇1時間目:HR 2
END
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