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第4章ー31 生徒室にて
所変わって、生徒会室。
100㎡程の広い部屋約半面に、オーク材の書斎机が2台ずつ向かい合うような形で4台配置され、窓側に1台だけ独立した書斎机が、その4台を向いて置かれている。
もう反面にはソファセットとミーティングテーブル、そして簡易キッチンと仮眠室へ続く扉がある。
その生徒会室では、生徒会長のカルラ・ヤギューと副会長のフィランド・イプサムの従兄コンビが黙々と仕事をしていた。
年度初めの今月は、昨年度の収支報告や今年度の最終予算編成、各行事の日程決めなど、やることは山の様にある。
只でさえ忙しいこの時期に役員の一人、書記兼会計のルマーシェ・ビランが朝から授業に行ってしまった為、会計を通らないと進まない仕事を片付けるため、仕方なく2人でその仕事を分担してやっている。
ミーティングテーブルの方では、カルラの召喚精霊・ノッカーのリックと、ルマーシェが自分の代わりに、と置いて行った召喚精霊・ピクシーのルイスが、こちらも黙々と書類整理をしている。
「……全く。お前が今日授業に出るなどとアレに言うからだ。」
「……俺だってまさか1限から出るなんて思ってなかったさ。…編入生は第2タームまでは補修があるからな。その時にちょっと顔を出して見ようと思っていたんだが……。」
世界共通の暦では1年を360日と定め、それを10の月に仕切り、更にそれぞれの月を10日ごとのタームに分けている。
休日の設定などは国によって様々だが、ここカルフィン共和国では、1つのタームの中で末尾が4・9・0の日が休日となっている。
第2タームとは、20日までという事である。
「…今のアレは周りが見えていないからな。…だが、まさかルイスを置いて行くとは私も想定外だった。」
カルラの言葉に、フィランドはルシェの召喚精霊ルイスを見る。
主に置いて行かれたルイスは、どこか寂しそうだ。
………ったく、あいつは何をやっているんだ…!
と、その時、驚くほど大きな魔力の波動を感じた。
! !
「………これは………カルラッ……!」
「…ああ。コレは結界の波動だな。…それもかなり強力な…。
…コレが編入生のどちらかの力だと言うのなら、ルシェが興味を持つのも納得できる。…私も会ってみたくなったよ。」
「…確かに。それに随分挑戦的だ。これ程の力を持つ召喚獣であれば、魔力の気配を隠す事もできるだろうに……ククッ…これは…本当に面白くなりそうだ。」
カルラの言葉に、フィランドも男らしく整った顔を面白そうに歪めて嗤う。
フィランド自体はカルフィンで生まれ育っているが、父方の祖母はこのカルフィン共和国がある大陸の最西端、ルクフェイルの出身だ。
その国は「北の大陸唯一の戦闘民族」とも呼ばれ、フィランドにはその血が濃く出たのか、戦う事への欲求が強く、また強いモノに惹かれる傾向がある。
だが、ルシェのそれのように激しい執着のような感情は抱かない。
今回のリアやライナーへの興味も、あくまでもルシェの“アルプより強い召喚獣”へ対する物であり、彼ら個人に対するそれでは無いのだ。
だが今。
想像以上の魔力の波動を捉え、一気にその興味が膨れ上がった。
…クランツ兄弟、か。
久しぶりに楽しめそうだと、フィランドは放課後に思いを馳せるのだった。
生徒室にて END
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