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第4章-32 魔術基礎編 ◇属性

「それじゃあ引き続き僕の授業を始めるよ。今日は初回だからこの教室でこのまま授業をするけど、次回からは第5運動場を使うから覚えておいてね。」 先程の休憩時間にライナーに思いっきり甘えたリアは、今は少し落ち着いて、強張っていた頬にもバラ色が戻ってきている。 ちなみに結界の外で悔しがっていたルマーシェ・ビランはライナーが引きずられて帰って行った。 今は召A1クラス全体に結界の幅が広げられ、ペガサスが認めた者以外でこの教室に関係ない者の侵入が出来なくなっている。 もちろん外から中の様子を伺い見る事も不可能だ。 そのおかげで不特定な視線や魔法の痕跡から解放されたリアは、ケット・シーをナデナデしたり、ペガサスの青銀に輝く長く美しい鬣に顔を埋めたりしている内に、機嫌も上昇中だ。 更には、それをさり気なく見ているクラスメイトのテンションも上昇中だ。   ……可愛い……//// 特にリアの右隣、言わずと知れたサーガなどは、とうとう記録玉を持ち出してその様子を撮影している。 この記録玉での撮影については、サーガがライナーに死ぬ気で懇願し、コピーを献上する事でお許しがでた。 そんな訳で心置きなくサーガはリアを撮りまくっている。 その様子を担任のマーク・ハプソンは生温い目で見ているが、止めはしない。 ……まずリア君にはこの環境に慣れてもらう事が先決だからね。 と、多少の事には目をつむる方針だ。 「それじゃあ、初めての子も三人いるから、授業に入る前にまずは君達の魔力属性を調べようか。」 そう言ってマークが取り出したのは、直径20cm位の水晶玉が6個連なったような道具で、6つの水晶はそれぞれ火・水・風・土・雷・氷の魔力に反応して光る仕組みだ。 要はこれに魔力を送り込めば、自身の属性がわかると言う訳だ。 マークは簡単に水晶玉の説明をすると、とにかくやってみよう、と、最初の生徒を呼ぶ。 「まずは新入生のユミル君からね。じゃ、ここまで来て…ここに手を置いて、ゆっくり魔力を送り込んで?魔力の使い方が分からなければ、この水晶に光れ、って念じて見てね。」 言われた通りユミルが水晶に手を置き、魔力を送ると、やがて4番目の水晶が黄色く光り、次いで2番目の水晶が水色に光った。 「うん、君は土と水の魔導士だね。特に土が強いかな。じゃあ次はハミール君ね。」 そして、ハミールは水と氷の魔導士だという事が分かった。 「最後、リア君。…リア君、こっちまで来れるかな?聖獣さんたちと一緒でいいからね。」 マークに優しく言われ、リアはエスティを抱っこして、シェラの鬣をキュッと握った状態で立ち上がり、前だけを見て歩き出した。 前の席にいる4人が、リアを気にしながらも、なるべくそちらを見ない様に気を使っているのが微笑ましい。 「…頑張れたね。…じゃあリア君もココに手を置いて?心の中で水晶さんに光って~ってお願いしてね。」 マークの言葉使いが、まるで小さな子供を相手にしているようになってしまうのは無意識だ。 だが周りの生徒達も疑問に思っていないようなので、それはそれで受け入れられているのだろう。 リアは言われた通り小さな手を水晶に置いて、大きな目を伏せ心の中で念じる。 ………すいしょうさ、ん?……おねがい、なの……ひかって……? その瞬間、水晶が大きく光り、そして… !!!! 「きゃっ!」 パリン! パリン! パリン! パリン! パリン! パリン! 次々と水晶が割れ、その破片が飛び散る。 マークが慌てて生徒達に声を掛ける。 「…ッ…だっ、大丈夫?みんなケガは無いっ!?」 幸い、全てペガサスがその羽で受け止め、人的被害は一切無かったのだが… 正面にいたリアは驚きで、床にぺたんとお尻を付いてしまっている。 そして。 あ、まずい。…どうしよう。 一瞬の驚きの後、マーク含めクラス全員が思った。 が、どうにか出来るはずもなく。 「……うっ……ふぇっ………ひっく……」 リアの大きな瞳からポロポロと涙が溢れ出す。 慰めるようにペガサスが大きな羽で抱きしめ、ケット・シーが溢れる涙を舐めとっているが、リアの涙は止まらない。 誰もが固まり、リアの小さな鳴き声だけが響く中、教壇側にある教室のドアがバンッと大きな音を立てて開いた。 「………リアッ!!」 言わずと知れた、ライナーの登場である。 ………………なぜ分かった?! これもまたクラス中の疑問なのだが、それはそれ。 ライナーの、弟溺愛パワーと言う事で落ち着いたらしい。 …もちろん、実際の所はエスティが心話で連絡したのだが。 クラスメイト+担任がちょっとした恐怖に慄いている中、ライナーも床に座りリアを膝抱っこにして、必死であやしている。 しばらくして、泣き疲れて眠ってしまったらしいリアを抱き上げ立ち上がったライナーは、ゆっくりと振り向き、鋭い眼光でマークを睨み据えると、 「今日はもう寮に戻る。いいな?」 そう言って聖獣達と共に、さっさと教室を出て行ってしまった。 …………オニイサン怖っ!超怖っ!!! ここでもクラスメイトの心は一つ。 担任が最初に思った通り、案外良いクラスになるかも知れない。 魔術基礎編 ◇属性 END

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