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第4章ー39 クランツ兄弟-1

シェルバ・メルケルの言葉に、為政者達が沈黙し重圧を感じていたと同じころ。 カルフィール魔法学校の生徒会室では。 役員が3人揃っていた。 「…んも~ぉ!! ライナー君の意地悪! なんでリア君隠しちゃうのさっ!!」 あんなに可愛くて綺麗な生き物は、みんなでたっぷり愛でて鑑賞するべきだとは、ルマーシェ・ビランの持論だ。 もちろんリアだけでなく、ライナーも十分鑑賞に値する美貌をしておりHRの間中ライナーを眺めていたのだが、それらの視線は全てスルーされ、ライナーの視線がルマーシェに向けられる事は1度も無かった。 これについては思うところはあるものの、姿を隠していた訳ではなかったのでたっぷり1時間、その美貌を鑑賞できたので良しとしている。 しかし! あの休み時間の結界はいただけない。 何も捕って食おうというのではく、ただ、色々な角度から愛でて鑑賞したかっただけなのに! 魔物から守るがごとく、結界まで張られたのは、実に、実に、心外である。 実際に結界を張ったのはペガサスであるが、ルマーシェの中ではライナーが召喚獣にそうお願いした事になっている。 しかも、2限目が始まって間もなく、ライナーは険しい顔をして立ち上がったかと思うと、何も言わずに教室を飛び出して行ってしまった。 「…まあ、アレは多分リア君に何かあったんだろうとは思うけど…」 「「……。」」 「…ところで、なんで2人ともそんな顔してるのさ?」 「……ルシェ、暫くあの兄弟に関わるのは止めろ。」 カルラが静かな声でルマーシェに命ずる。 「…はぁ…?!そんなの無理!絶対無理!仕事もちゃんとするから!ね、いいでしょ?」 「…駄目だ。何もずっと関わるなと言ってるんじゃ無い。暫くの間だ。…じゃなければ…兄の方に殺されるぞ、お前。」 「……殺っ?!…って、何、それ!……ま、さか!フィランド、手ぇ出したりしたんじゃ……!」 それまでカルラを見ていたルマーシェが、フィランドを振り返りながら叫ぶように問う。 「…ああ。」 「…っ。何てことしてくれちゃう訳ぇ?!…だいたい君は好戦的過ぎるんだよっ!あんな綺麗な子達によく手が出せ…」 「だまれっ!!!」 「!!」 激昂しだしたルマーシェに対し、フィランドはそれ以上の苛烈さで返す。 「……チッ…」 そうしてその激昂した自身に苛立つように舌打ちし、フィランドはそのまま生徒会室を出て行った。 「…何なのさ?!訳わかんないしっ!!」 「…落ち着け、ルシェ。…とにかく暫くはあの兄弟への接触は禁止だ。…特に兄の方は、人へ向けて攻撃する事に対して全く躊躇いが無かった。今近付いたら、多分お前も無事では済まん。」 「…って、カルラもその場にいたって事?何で止めなかったのさ!」 「…すまない。私もつい興味の方か勝ってしまった。しかし見ていたからこそ断言できる。あの兄弟は独特の世界観を持っている。兄の苛烈さはもちろんだが、弟の方も他人に対する諦め感…と言うか、ハッキリ言えば、他人が自分の事を嫌うのは当たり前だと本気で思っている風だった。…とにかくフィランドのように後悔したくなかったら、いう事を聞け。」 「……。」  クランツ兄弟-1 END

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