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第4章ー40 クランツ兄弟-2
寮に帰って来て約1時間。
煩い同室者が帰ってこない内にと、ライナーはようやく落ちついたリアを連れて、これから特別棟5階にある理事長室へ行くところだ。
とにかく今は誰にも会いたくない為、リアにお願いしてもらい、ペガサスの力で直接理事長室へ送ってもらう事にした。
『では行きますよ』
ふわりと周りが光ったと思った次の瞬間には理事長室の中だった。
!!!
「うわぁ!」
「わっ!ビックリしたっ!」
そこには突然現れたリア達に心底驚いた様子の理事長、ムーガ・ハプソンと、その息子でリアの担任のマーク・ハプソンがいた。
暫しの驚愕から覚めると、マークが慌ててライナーに抱かれたリアの所までやって来る。
「リア君!さっきはごめんね?ケガはない?大丈夫?」
「…アンタはリアがケガをするような恐れがあるものを…使わせたのか?」
ライナーの纏う空気が氷点下に下がる。
「……まさかっ!ちっ、違うよ?僕もまさかあんな事になるなんて、思っていなかったんだ。…本当にごめんね、リア君。」
とても申し訳なさそうに謝罪するマーク。
「…ん。…りあ、だいじょ、…ぶ。」
リアはライナーの胸にぎゅっ、と抱き着きながら答えた。
ライナーはそんなリアの頭を優しく撫でてやっている。
「それにしても、皆で揃ってここに来るなんて、何かあったのかな?」
少し遅れて驚愕から覚めた理事長が問いかける。
「決定事項を伝えに来ただけだ。…明日からは俺もリアと同じ教室で一緒にいる事にした。アンタ達は必要な処理をしておいてくれ。」
「……えっと、それは個人授業にするのではなくて…?」
「そうだ。あくまで俺がリアの所へ行く。」
マークの問いかけに端的に答えたライナーに、理事長は思案顔だ。
「……理由を聞いてもいいかな?」
「寮へ帰る途中突然攻撃を受けた。どちらを狙ったと聞いた俺に、そいつは“両方”だと答えた。」
!!
「そんなっ!!誰がそんな事っ!!」
「…さあな。だが攻撃を仕掛けて来たのは、金髪に碧の目をした、人間にしては大柄な好戦的な雰囲気の男だ。あともう一人、黒髪黒目のいけ好かない見物客もいたな。」
「「……!!」」
「…心当たりがありそうな顔だな。ならば奴らに伝えておけ。次は無い、と。」
そうして要件はそれだけだと言い、クランツ兄弟達は現れた時と同じように、突然姿を消したのだった。
クランツ兄弟-2 END
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