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第4章ー44 泉に棲む者-3
ライナーとルピタスが“難しいお話”をしている間、実はちょっと眠たくなってしまっていたリアである。
エスティはリアの膝の上でしっかりお昼寝タイムに突入している。
「……なぁ、に?」
ぼんやりしていた中、突然目の前に出された小さな箱に、リアは大きな目をぱちくりしている。
だがすぐに視線は箱から外れ、箱を持つルピタスの美しい鱗で覆われた手や腕に気付き、リアの瞳は嬉しそうに輝く。
「…あおの、ひら、ひら……」
そう言って箱には興味を示さず、膝に抱っこされたまま小さな手をルピタスに向かって伸ばすリアに、ライナーは苦笑い、ルピタスは、
「…えっ、と、…えっ?えっ?」
困っていた。
「…リア…ソレは後な。…今はこれを開けてみような。」
ライナーはリアがルピタスへと伸ばした手をそっと掴んで、箱の上へと置いた。
!!
すると箱はふわりと淡く光った後、静かに開いた。
中に入っていたのは。
「「「『…………。』」」」
何と表現すれば良いのか…
取り敢えず“古い木”だという事だけは分かった。
詳しく言うと、その辺に落ちていた枯れ木を拾って、楕円形に削り等間隔に穴を開けた………木だ。
穴の1つが飛び出ており、明らかに何かの道具である事は分かるのだが、その用途は全く想像がつかない。
つまり。
見た目は。
「…木、ですね。」
「…そんな…何かの魔具では……?」
見たままの感想を述べるライナーに、初めて箱の中身を見たルピタスも困惑した様子で、精一杯の可能性を述べる。
『…ですがコレから魔力は感じません。』
…が、すぐさまペガサスにより否定された。
一方、1人大人しくしているリアは、ライナーの膝の上でその“古い木”をじっ、と見つめている。
そして。
「……おか、り…な……」
『…主?』
「リア…コレが何か分かるのか?」
「…ん。…おなり、な。……ふーっ、ってする、の……」
こくりと頷いたリアは“おかりな”を手に取ると、小さな穴に細い指先を添え、“くち”を銜えてそっと息を吹き込んだ。
リアも初めて目にする物だったが、何故だかこの道具を見た途端、その名称と使い方を“思い出した”のだ。
そうして“思い出した”メロディを奏でて行く。
高くも低くも無い不思議なその音が響き始めると、リアの周りに漂っていたユグは一気に完全浄化され、その作用でもともと美しかった泉の水は更に透き通り、煌めく癒しの水へと変化した。
ライナーがふと気付くと、古い枯れ木だったソレが、若木の様に艶めくソレに変わっていた。
そうして演奏が終わると。
!!!
『…主!!』
「リアっ!!」
「ユーグの子!?」
リアはそのまま、ふっ、と意識を失い、くたりとライナーの胸に倒れ込んだのだった。
泉に棲む者-3 END
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