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第4章ー45 影と光

そこはとても暗く寒く、色の無い場所だった。 赤黒く薄暗い空に、枯れ果てひび割れた灰色の大地。 その中央部には朽ちて、今にも崩れ落ちそうな枯れ木が1本立っている。 そしてその枯れ木の傍には黒いもやもやとした影。 『……なぁ、に?……こ、こ…。……しぇら?…らい、なー?…えすてぃ、……どこ…?…………りあ、…ひとり……は、……いや……』 リアがそう思った途端、大きな光が辺りを明るく照らした。 しかし明るくなっても見えるのは暗く寂しい空と、枯れ木があるだけの大地だけで、シェラもライナーもエスティもいない。 『……い、やぁっ……!!……りあ、こ…こは、……いや……ふえっ……ぐすっ……』 知らない場所が怖くて、一人が怖くて、暗いのが怖くて…… でもリアが泣いても、誰も来てくれない。 『……ユ…………の……子……ユー……グ……』 『……!……だ…れか、……い、…る…の……?』 『……ユー……の……子、…僕の……が……聞こえ……る……?』 『…だぁ…れ…?……ひっく、……ここ……か…ら、……だし、て……』 『……!!…ああ!!……やっぱり君だったんだね。……この寂しい世界で、こんなにも綺麗なユグが生まれたのは初めてだし、光を見たのも本当に久しぶりだから……絶対に君だと思ったよ。怖がらなくて大丈夫、泣かないで?ここからはすぐに出れるから…少しだけお話してくれる?』 リアは優しい声の主を探すが、辺りに人影は無い。 あえて言うなら、枯れ木の横にあるもやもやとした黒い影の様なモノが喋っているように見える。 『……だ、ぁれ?…どこ、に……いるの…?』 『……僕が見えていないの?…こんなに近くにいるのに……ココだよ?』 その声と共に、もやもやした黒い影がふわふわと揺れる。 『………くろ、…の…かげ、…さん……?』 『………!!…………そうか。……君には僕が“そう”見えるんだね……僕には君が光そのものにしか見えないように、君には僕が黒い影にしか見えないんだね。』 『……?…ひか、り……?…りあ、は、…りあ、だよ……?』 『そっか、リアと言うんだね。ならはじめまして、リア。君がここに来るのを…本当に長い間待っていたよ。…ここは君が生まれた場所。ユーグの世界。』 『……?』 『…覚えていないかい?今君がココにいるのは、多分僕が残したユグドラシルの一部に君が触れたからだと思うのだけど…。その時に何か思い出さなかった?』 『…ゆ、ぐ………お…か、りな……?。』 『そうか、あのオカリナが君をココへ導いてくれたんだね…。来てくれて本当にありがとう、リア。君がここへ来てくれたおかげで、僕はもう少しだけ待っていられる。』 『……みちび、く……?』 『うん。…ねえリア、時々でいいからオカリナを吹いてくれないかな?…心配しなくても大丈夫。もうそのオカリナを吹いてもココへ来ることは無いから。』 そう言う影の輪郭が段々と薄れてゆく。 『……、…!!………。』 もう黒い影が何を言っているか、リアには分からなかった。 そうして再び、リアの意識は深く沈んでいった。 影と光 END

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