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第4章ー58 炎の騎士-3

リア達がカルフィールのルピタスの神殿へ戻って来たのは、15時のお茶の時間を少し過ぎた頃だった。 先日リアが浄化した泉はキラキラと輝き、穢れないユグは水の精霊達はもちろん、樹木の地精霊達をも活気付け、泉の周りは驚くほどの実りに満ちている。 地精霊達は当然の様にそれらの実りを次々とリアにプレゼントしてくれるので、森を出る頃には大変な量になってしまっていた。 精霊達が贈り物をくれる度、嬉しそうに笑っていたリアは間違いなく可愛いかったが、しかしこの量だ。 木の実等は日持ちするので良いとしても、果物類はとても2人では消費出来そうもない。 だからと言って腐らせたりしたらリアが悲しむ。  …まあ、またあいつ等に渡しておけばどっか適当に配るだろ。 この件については同室者任せにする事に決め、ライナーは取り敢えず一抱えしなくてはならない程の贈り物群から目を背けたのだった。 変わって想定外の人物の襲来に困惑中の202号室。 サーガはルマーシェ・ビランとの繋がりでフィランドと面識はあるものの、彼のいない場所でこうして会うのは始めてである。 加えて相手はあのリア・クランツに用事があるときた。 さっぱり繋がりが分からない上、フィランドは説明する気もないらしく、クランツ兄弟が不在だとわかった今も「ではここで待たせてもらう」と一言いったきり、一人掛けソファにどかっと座って目を閉じている。 ウェルザが気を使ってお茶を淹れて出したのだが、手つかずのままだ。 …なんつうか、嫌な予感しかしないいんだよな~。 …リア君に用事なんて……ライナーさんを怒らせるような事にならなければいいんだけど…。 2人で同じような事を考えながらサーガがちらり、と時計を気にしたその時。 部屋の鍵をあける音がした。  !!  帰って来た! すぐさまサーガが立ち上がり、面倒なことになる前にライナーに状況を説明しようと、慌ててリビングを出て行った。 しかし。 玄関ホールにいたのは、リアをしっかりと腕に抱いた状態でゆらりと殺気立ち込めるライナーだった。 「ウゲッ! あ、あははは!…ライナーさん? なんかご機嫌ななめッスね!…リッ、リアちゃん、お帰り!お家は楽しかった?」 冷や汗をかきながら取り敢えず頑張ってみるサーガだが。 「……なぜココにアイツがいる?」 血の気も氷るような声音のライナーに、心底ヤバい!と思っていた。 「あ、っと、なんか、その…ええとですね……」 何とか取り繕うとするが、言葉が続かず押し黙ってしまい、同じく無言のライナーに肩を押され、何も説明出来ないままリビングへと続く扉を開けられてしまう。 そうして扉の向こう側で待ち構えていたフィランドとライナーが向き合った。 「……一応聞いておく。マジェス・リードから伝言を受け取っていないのか?」 ほぼ同じ位置にあるフィランド・イプサムの目を見据えながらライナーが問う。 「……リア・クランツには一切かかわるな、と聞いた。」 「……そうか。なら帰れ。今なら見逃してやる。」 「……そうはいかない。」 そう言ってフィランド・イプサムは改めて、ライナーの腕に抱かれたまま不安そうに2人のやり取りを見ていたリアに、強い視線を向けた。 「………リア・クランツ。俺はお前の騎士になりたい。俺に…お前を守らせてくれ。」 炎の騎士-3 END

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