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第4章ー63 炎の騎士-8
ライナーとペガサスがフィランド・イプサムの扱いについて心話で話している中、リアはオカリナを持ってライナーを振り返る。
「……ね、…ライナー…?……リア、これ、…ふー、する。」
そう言ってライナーの膝の上からぴょん、と飛び降りた。
当然誰もがリアが吹くのだと思っていたのだが、予想に反してリアはオカリナを持ったままフィランドの元へ行く。
そうして両手でフィランドにオカリナを差し出すと、小首を傾げておねだりポーズだ。
「……ふー、…して……?」
「「「「…………」」」」
『『『…………』』』
「…ぐっ。…リアちゃん………!!……俺の方向いてもっかいやって……っ!!」
「………っ……リア君///」
『『ユーグの子、可愛い…///』』
「……リア……。(無防備過ぎるぞ…)」
『……主……(いつか私はあなたを幻獣界へさらって行ってしまうかも知れません……)』
それぞれが反応する中、フィランドだけは顔を片手で覆って固まってしまっている。
「………ッ……////」
しかし。
「……ふー、……だ……め……?」
差し出していたオカリナを胸に戻し、俯いてしょんぼりとしてしまったリアにフィランドは慌てて返事を返す。
「……いやっ、そうじゃないっ!……その……おっ、お前からお願いことをされたのが嬉しくて……っだな…。……少しだけ待ってくれるか?」
どこか必死な様子のフィランドに、リアは少し驚いた顔をしたが、それでもこくり、と頷いた。
そうしてどうにか気持ちを落ち着けようとしているフィランドを、その大きな目でじっ、と見つめている。
「…………………ふぅ…。……良し。いいぞ?」
そう言って差し出された浅黒い大きな手に、リアはオカリナを渡した。
~♪~🎶~
そうして奏でられたのは、年老いた吟遊詩人が己の夢の為に故郷に置いて来た恋人を思って作ったと言われる曲。
だが物悲しい訳では無く、柔らかな旋律で、ただただ優しい思慕が伝わるようなメロディだ。
「……へぇ。……意外。」(サーガ)
「ほーお?」(ライナー)
「……////」(ウェルザ)
『……中々のものですね。』(シェラサード)
『……ZZZ……にゃ……』(エスティ)
皆がフィランドの意外な特技に反応を示す中、リアはその場でぺたんと座り、フィランドを見上げながら薄っすらと微笑んでいる。
やがてメロディはゆっくりと終わりを迎えた。
………
しばしの余韻の後。
「……リア・クランツ。改めて請いたい。……俺は。俺はお前と一緒にいたい。俺をお前の騎士にしてくれ。…その為に必要だと言うのなら、この目でも腕でも差し出す。」
オカリナを静かにテーブルにおいたフィランド・イプサムは、最初の部分はリアを見つめて、後半部分はライナーを見据え、強い目をして覚悟を告げた。
「……リア、と…いっしょ、……いる……?」
「………ああ。」
「……リア…。」
ライナーが、「駄目だ、まだそれ以上は言うな」と言おうとした時。
「……ユグ?………ユグ、が……いっぱ、い……?…。」
リアの言葉に、ライナーも周りのユグの異常に気付く。
「………これはっ……!!………リアっ……!」
ライナーはとっさにロー・テーブルの反対側から手を伸ばし、素早くリアを抱き上げた。
『……どんどんユグが活性化しています。』
活性化は見る見るうちに進み、今やサーガやウェルザにも分かるほどになり、信じられない事にユグはまるで意思があるかのようにフィランドを囲って渦巻き始めた。
「………ぐっ……ぐあっ………!!」
フィランドは異状に痛み出した右目を押さえてその場に蹲った。
そして。
「ぐああぁぁぁ!!!」
ライナーの腕の中でビクッとリアが震えた時、フィランドの周りで渦巻いていたユグが一気に、その右目を狙って突き刺すようにぶつかってゆく。
瞬間的にペガサスが張った結界に守られ、リア達に被害は無いが、結界の外では暴風が吹き荒れ、凄まじい状態になっている。
すでにフィランド・イプサムの姿は確認できない。
「ちょっ……、コレ、どうなってんスかっ?副会長はっ?」
「……全く見えない。でも凄い気配だけは感じるよっ!」
サーガとウェルザはパニック状態だが、ライナーとペガサスは。
『………覚醒、か……?』
『間違いないでしょう。…どんどん彼の魔力が高まっています。』
『………。』
やがて嵐のような暴風が止み、打って変わった静寂が訪れた。
炎の騎士8 END
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