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第4章ー64 炎の騎士-9
「……(覚醒が)…終わった、か…。」
『…そのようです。』
「ちょっ、オニイサン!…終わったって何がっスかっ!?」
「……ふ、副会長っ!!」
言葉の足りないライナーにサーガが喚く中、蹲ったままのフィランド・イプサムを見つけたウェルザが慌てて駆け寄ろうとしたのだが、肩を掴んだライナーによって止められる。
「ここから動くな。」
ウェルザ達にそう一言残し、ライナーはリアを抱いたままフィランドに近付いて行く。
「……いつまでみっともなく蹲っているつもりだ?もう立てるだろう。……立ってその面、見せて見ろ。」
「…………ッ……くっ……」
冷たく響いたライナーの言葉に、フィランドは必至で意識を保ちながら、ぐっと奥歯をかみしめ顔を上げた。
そうしてすぐ前に立つライナーを見上げ、その腕にリア・クランツがいるのを見ると、何とか力を込めて立ち上がった。
そうして正面から真剣な表情でリアを見つめる。
そのフィランドの碧眼の1つは、驚いた事に人が持てるはずがない鮮やかな “紅” に変化していたのだった。
「…ほぉ。面白い事になっているじゃないか。」
「………おめ、め……?……シェラ、と。…おそろい、…ね。」
ライナーは平然と、リアは無邪気に感想を述べているが、反対に同室者達は、フィランドの瞳の在りえない変化を見て驚きに言葉を失っている。
……この目、上位精霊が宿ったか……。
『……フィランド・イプサム、俺の声が聞こえるか?』
「………!!…ッな?!」
『……声を上げるな。…心で話せ。今のお前になら出来るはずだ。』
『………。……この力は何なんだ?』
『……何がどうなって“そう”なったのかは分からないが、結論から言う。………お前の願いは叶えられた。』
!!!
ライナーの言葉にフィランドは目を見開く。
『……おそらく意識した事では無いだろうが、リアはお前を認めた。…それでお前の中の騎士の血が目覚めた。……これ以上ここで話す事は出来ん。……少し場所を移動する。』
そう言うとライナーは心話を止め、まだ茫然としている同室者達に向かう。
「…俺達は少し出て来る。…悪いが説明は求めるな。」
ペガサスが崩壊した室内をしっかり元に戻した後、リア達がシェラサードの力で瞬間移動して来たのは、ルピタスの神殿だ。
ここならば何をしてもまず人の目に触れる事はない。
初めて連れて来られたフィランドは、学園内にこのような場所があった事に驚きを顕にしている。
ライナーは自身を落ち着かせるように、目を軽く閉じ1つ息を吐くと、腕に抱いていたリアをフィランドへと差し出した。
「………ほら。」
「……なっ!?………リア・クランツ……////」
ライナーの急な行動にどういうつもりなのかを問おうとしたフィランドだが、ライナーに両脇に手を入れられた状態でぶらん、と差し出されたリアがキョトンと己を見ているのに気付き、言葉が止まる。
「………リア、…だっこ……?」
「……ッ……俺が抱いても…いいの…か……?」
フィランド・イプサムの言葉に、リアはこくんと頷くと、その小さな手を伸ばした。
そうして初めて腕に抱いたリアの柔らかな体とほのかに甘い香りに、フィランドは言いようのない幸福を感じていた。
炎の騎士 END
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