82 / 163

第5章ー1 ◇Prologue

大陸史:1418年 風の月 1日 西の大国・レイゴット帝国。 帝都マクフェルの最上部にある皇帝の執務室には、皇帝アイーダをはじめ2人の大臣および近衛師団の総団長、帝国師団の将軍が集まっていた。 「…それでは将軍、始めよ。」 皇帝の実弟でもあるラウゼル大臣の言葉を合図に、将軍レジウスがこれまでのある調査結果を報告し始める。 「はっ。…オフェリア殿下におかれましては、生後40日頃までは帝都南部の街ラグースの商家にてお過ごしになり、その後は転々とお移りになり、2歳頃までに計9名の里親の元でお過ごしになっておられたようです。」 「……なんと2年で9回というのは、どういう事なのだ!?」 ラウゼル大臣が驚きの声を上げる。 「…真に遺憾ながら、恵まれた環境ではなかったようで、どの里親からも疎まれていたご様子でした。」 「…なんとおいたわしい……それで、今はどこにおられるのだ?」 「…申し訳ございません。ラグースの街を出られた2歳以降、オフェリア殿下に繋がる情報が何も無く……現在八方手を尽くしておりますので今しばらくお待ち頂きたく…。」 「まだわからぬだとっ?!栄えある帝国師団が何をやっておるのだ!リルフィン妃殿下のお力により、オフェリア殿下が死産ではなかった事がわかってすでに半年も経っておるのだぞ!?」 もう一人の大臣、王義弟ベルザの叱責が飛ぶ。 「……申し訳ございません。…隠密行動につき、動かせる者が限られておりますので。…せめて1師団でも使えれば…」 「……それはならん!万が一2番妃の耳に入ろうものなら、生きている者も死んでしまうわい!」 「……ベルザ殿、お言葉が過ぎましょうぞ。…エレッカ、近衛師団の方では何か掴んでおらぬのか?」 「…いえ。レジウス将軍がおっしゃるように、ラグースの街以降の足取りがピタリと途絶えておられます。……ただあの町は…今でこそ、帝国師団の取り締まりで安全な町になっておりますが、一時期は人買いが横行しておりましたので、あるいは……。」 そこでいままで黙って報告を聞いていた皇帝アイーダが全員を見据え、言い聞かすように命じる。 「………いずれにしても、正妃が第3皇子オフェリアは生きている、と告げただけでなく、世界の運命を担う者とまで言ったのだ。必ず見つけ出し早急に保護せよ!よいなっ!?」 「「「「はっ!!!!」」」」 リアを取り巻く運命は大きく動こうとしていた。 第5章 Prologue END

ともだちにシェアしよう!