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第5章ー4 新しい日々-3
今日の訓練を終えたライナーとフィランドは、リアを迎えに来ていた。
元同居人達からの希望もあり、ライナーが今も持っていた202号室の鍵を開けた。ドアを開けた途端、腰に抱き付いて来たのは可愛いリアだ。
「……おかえ、り、なさい。」
「ただいま、リア。」
そう言ってリアが抱っこを強請る前にひょい、と抱き上げたライナーは、リアの柔らかい頬に軽いキスを贈る。
それに可愛いキスを返したリアが、ライナーに抱かれたままフィランドへと手を伸ばすと、意図を察したファランドもリアに「ただいま」を言い、米神に優しくキスをした。
リアがフィランドにキスを返した所で三人揃ってリビングへ入ると、この20日ほどで日課となったティータイムとなる。
1時間ほどお茶を飲みながら、サーガとウェルザから留守番中のリアやエスティの様子を聞いたり、あるいは本人であるリアが楽しそうに報告するのを聞いて、19時頃に解散する。
自室に戻るとフィランドは自室へシャワーを浴びに向かい、その間リアはエスティと一緒に、ライナーから簡単な魔術を教えてもらう。
とは言っても、ライナーが出す課題は毎回リアが喜ぶ要素満載で、今日は水・炎・氷の属性をコントロールする練習だ。
まずはライナーがお手本を見せる。
リビングのソファに座り、
「じゃあいいか?よく見ているんだぞ。」
「はぁい!」
ソファの前に置いてあるローテーブルには、今日の練習に使うのだろう砂糖と、一口サイズに切ったリンゴが並べてあった。
元気にお返事をしたリアは、テーブルを挟んで反対側にエスティと並んで座り、わくわくとライナーの手元を見ている。
リア達の視線が自身の手元に集中しているのを確認したライナーは、分かりやすいようにゆっくりと魔力を開放していく。
まずは水の魔力を使い、大気中の水分を直径2cm位のビー玉状に集めてその中に砂糖を入れる。
次に炎の魔力で熱を加えて軽く煮詰め、
黄金色に色付いたところで、リアが地精霊達からもらったリンゴを、小さめの一口サイズに切り木櫛を挿しておいた物に絡めたら、最後に氷の魔力を使って、一気に冷やす。
すると……
「ほら、リア。りんごの飴だ。」
そう言ってリアの小さな口に、出来たてのりんご飴を入れてやる。
「………///」
リアは、小さな口いっぱいに広がった甘さに、にこにこしている。
そして、あっという間にリアが大好きな甘いお菓子を作りあげたライナーに、リアとエスティは尊敬の眼差しだ。
「さあ、次はリアとエスティ、頑張ってみろ?」
「「はぁい!(にゃあ!)」」
そうやってコツを少しずつ掴みながら、二人で10個ほどりんご飴を作り終えた頃、フィランドがリビングに戻って来た。
それを見て、丁度のタイミングで出来上がった飴を持ったリアが立ち上がり、フィランドに向かって背伸びする。
「おかえり、なさ、い」
可愛い出迎えに、ここ数日でようやく緊張せず自然に抱けるようになったリアを、本人の希望通り軽く抱き上げたフィランドは、
「……今日はりんご飴か。」
そう呟くと、リアが嬉しそうに差し出しているそれをパクリ、と口に入れた。
そうして、素直な子供そのままに、期待を込めて自分を見つめているリアに少し笑って、
「旨いな。サンキュー、リア。」
優しくぽんぽんと頭を撫でてやりながら、子供が期待する通りの答えを返してやった。
それにしても。
人間と聖獣達の魔力の使い方の違いには本当に驚かされるとフィランとは思う。
魔力で飴を作ったり、果物を洗ったり、風呂を焚いたり……人間には想像も出来ない魔力の使い方だ。
まず、人間は魔力を“溜める”事が出来ない。
攻撃魔法にしろ、防御魔法にしろ、その場に浮遊しているユグを呪文で支配して使う事しか出来ず、細かいコントロールは難しい。
また、ユグの薄い場所等では魔術は制限されてしまう。
それに対し、彼らは彼ら自身の中に溜まったユグを放出して使う為、呪文等も必要なく、コントロールも容易だ。
こういったカルチャーショックには大分耐性がついて来たが、大量に作られたりんご飴を見て、やっぱり“なんだかな…”と思ってしまうフィランドであった。
新しい日々3 END
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