91 / 163
第5章ー10 忘れ去られた国-4
大陸史:1418年 土の月・10日
あっという間に風の月が終わり、季節は秋を迎えようとしていた。
毎年この時期、カルフィール魔法学校では教育の一環として、ルブランの町と共同で秋の収穫祭を行っており、現在は5日後に迫った今年の収穫祭に向け、皆総出で、準備の追い込みにかかっている。
別名、精霊祭との呼ばれるこの祭りのメインの1つ、奉納舞を踊る者、音楽を奏でる者、その衣装を作成する者の他、バザールを担当する者や街の装飾を担当する者等、参加方法は様々ではあるが、ほとんどの生徒が何らかの形で参加が義務付けられている。
学校を挙げての行事の為、生徒や教師はもちろんだが、何よりも忙しくしているのは生徒会役員の面々であろう。
副会長をしているフィランド・イプサムも勿論例外では無く、忙しい日々を送っていた。
会長職にあるカルラ・ヤギューに至っては、ここ数日、寮の自室に帰る時間さえ無い程である。
そんな訳もあり、“ヒコク”については今のところ何の進展も無く、今はカルラが到達方法を見つけるのを待っているだけの状態だ。
ただ一点だけ大きな変化があった。
それは…。
「……ふぃら、んど?……リア、……できた。」
…可愛い天使が “お手伝い” に来てくれるようになった事だ。
そのお蔭でフィランドも、もう一人の役員であるルマーシェ・ビランも、素晴らしい効率で仕事をこなせるようになった。
しかし。
「………。」
…2人とも、もちろんリアにイイところを見せたいという気持ちもあるが、どちらかと言えば、リアの付き添いで生徒会室に来ているライナーが怖い、…と言う理由の方が強い。
自分は一切手伝わないが、今も無言で2人の仕事ぶりを監視し、少しでも隙のある仕事をすれば即座に背筋が凍りつくような鋭い叱責と、酷い時には氷の刃が飛んで来る
もちろん、大事なリアには絶対に気付かれないよう、ペガサスと組んでいるので、ライナーが彼らに何をしようが、リアに知られることは無い。
ちなみに、ライナーが手伝わないのは、“人間の為に力を貸すなど冗談じゃない”という理由からだ。
リアに関しては、人間ではなく、フィランドの手伝い、という事で、何とか自分を納得させている…が、どんな理由にせよ、ライナーの可愛いリアの手を借りると言うのだ。
それに見合った働きぶりはしてもらわないと許せない。
それゆえの徹底監視である。
一方でカルラは、最初こそライナーの手を借りたいと思っていたが、この監視役だけでも十分効率UPが図れているので、それで良しとしたようだ。
そうして迎えた秋の収穫祭は、大成功を収めた事は言うまでもない。
忘れ去られた国4 END
ともだちにシェアしよう!