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第5章ー11 忘れ去られた国-5

収穫祭も無事終わり、来月学園OBを招待して開催される“学園魔武術杯”の準備にも目途がつき、ようやく時間が取れる様になったカルラは、毎日の様に学園内に数か所ある書庫に籠りヒコクや父から託されたペンダントについて、何か手がかりが無いかと調べていた。 もちろんマルシエにいる家族達にもライナーからこの件は連絡済みで、“サイコク”やそこから分かれたヒコクを含む他3国についても、何か手がかりがないか調べてもらっている。 しかしこれと言った手がかりも無く、行き詰まりかけていたある日の夜。 その日も遅くまで調べ物をしていたカルラがそろそろ寝ようかと部屋の明かりを消した時、ベッド横のチェストに置いてあったあのペンダントが、ふわり、と浮き上がり淡い光を発した。  !! 驚いたカルラがペンダントを振り返ると、声では無い…頭に直接響くような“音”が聞こえ、その直後、カルラは意識を失った。  ……導く者よ。  …俺のカケラをユーグの子に触れさせろ。  そうすればカケラは力を取り戻し、お前に道を示す。 翌朝。 昨晩の不思議な音を聞いた名残なのか、脳内を直接無茶苦茶にかき回されたような最悪な気分で目覚めたカルラは、そのままフィランドの部屋へ向かう。 時刻は早朝5時。 人を訪ねるには早すぎる時間だが、あまりの体調の悪さ故に、カルラにそれを気にする余裕は無かった。 目的はフィランドではなく、リアだ。 遠慮なく部屋のチャイムを押し、フィランドが出て来るのを待つ。 案の定不機嫌そうなフィランドがやや乱暴にドアを開け、そこにいたカルラを見て驚いている。 「…なっ、カルラ!? お前がこんな時間に来るなんて、…それにその顔色……何かあったのか?」 「……昨晩妙な声を聞いた。…とにかくクランツ兄弟を起こして来い。」 フィランドの質問に簡単に答えたカルラは、それだけ言うとフィランドの背を押しのけ、リビングのソファにドカッと座った。 カルラの“らしくない”態度にフィランドも何かを察し、正直あまり気は進まないが、リアとライナーの個室のドアを叩いた。 暫くの後、ライナーが出て来たが、不機嫌さ全開で下手なことを言えば即、攻撃が飛んできそうな雰囲気である。 「……お前はもう少し常識的な人間だと思っていたが………間違いだったようだな。」 ソファに座るカルラに毒を吐きながら反対サイドのソファに座ったライナー。 続いてフィランドもその隣に座ったのを確認すると、カルラが口を開く。 「…時間については申し訳ないと思っている。……しかしどうしてもすぐに確認したい事ができたのでな。…単刀直入に聞く。“ユーグの子”とは、リア・クランツの事か?」  !! 「…どうやら間違いないようだな。」 「…その言葉を誰に聞いた?」 真剣な眼差しを向けてフィランドが問うのに、カルラは持って来ていたペンダントを出し、 「…これだ。……これが昨晩急に光り、頭に直接響くような不思議な声を聞いた。…その後私は気を失ったようでな。気が付いたのがつい先程だ。」 「………。」 「その“声”が、リアが“ユーグの子”だと言ったのか?」 険しい表情のまま黙っているライナーに変わりフィランドが問う。 「…いや。その声はユーグの子にコレを触れさせろ、そうすればコレは力を取り戻す。…そう言っただけだ。そのユーグの子というのが、リア・クランツの事だと思ったのは私の直感のようなものだ。」 「「………。」」 忘れ去られた国 5 END

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