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第5章ー14 忘れ去られた国-8

港町・ルフィンはカルフィン共和国の3大都市の1つである。 南の玄関口として年間約300万人が利用する大きな港と、中央広場で毎日開かれているバザールが名物だ。 ミグランド大陸にあるリースウェイ王国との貿易の拠点でもあるため、港町ならではの異国の珍しい装飾品や香料等はもちろん、新鮮な果物や魚介類を求めてこの町にやってくる商人も多い。 またルフィンから首都カルフィールまでは鉄道が整備されており、馬車では約7時間もかかる距離を3時間程で繋いでいる。 そんな港町へ一行が到着したのは昼を過ぎた頃だった。 馬車着き場は屋根付きの大きな建物になっており、待合室や土産物店等も綺麗に整備されている。 1等コパートメント利用者専用出口付近には、それぞれのコパートメントの荷物を持った係員が待機しており、客が降りて来るのを待っているようだ。 リア達も今回は長旅になる為、大きなトランクケースが幾つもあり、結構な量となっていたが、船へ乗せる分は別口で運んでもらっている為、ここにあるのは今日必要な分だけなのでそれほど多くはない。 ライナーの膝の上でエスティと一緒に興味津々に外の様子を伺っていたリアは、乗務員が降車の準備が出来た事を伝えに来たことにより、そのまま抱き上げられた。 その横からフィランドが例の水色ストールを掛けてやっている。 カルラを先頭に降り立った一行を待っていたのは、ムーガ・ハプソンの執事の一人で学園でも顔を合わせた事のあるブレッグ氏だ。 その後用意されていた馬車に乗り換え、ホテルに到着した一行は、ブレッグ氏から今後の簡単な予定を聞き、明日の集合時間までは自由行動ということにした。 案内された部屋は4階建てのホテルの最上階で、寝室が4部屋もあるとても豪華なものだった。 キングサイズのベッドが設置された部屋をリアとキリエ+聖獣達が使い、あとは適当に3人で振り分ける。 リアはリビングの窓に広がる初めて見る大きな街の光景に、おっかなびっくりといった感じだが、それでもエスティと2人、窓に張り付いてとても楽しそうだ。 『リア、人がいっぱいニャ!』 「……ん。…ね、エスティ…あれ、…なに、かなぁ?」 黒い煙を吐いている蒸気機関車を指すリア。 『……にゃあ!…すごく大きいにゃ!』 「……まるで本当に会話をしているように見えるな。」 可愛いらしいやり取りを見ていたカルラ以外の3人だったが、カルラが言った一言に、フィランドは思わず黙り込み、ライナーはため息、そしてキリエは思案顔だ。 そして。 「……カルラ君。…少し話そうか。」 「…私が聞いても良いのなら。」 「ふふ。…君は頭の良い子だね。」 そう言うとキリエはリビングのソファに腰かけ、他のメンバーにも視線で座るよう促した。 忘れ去られた国8 END

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