100 / 163

第5章ー19 忘れ去られた国-13

朝食を終え、部屋に戻って来たリア達は思い思いに過ごしていた。 リアは部屋に戻る途中、図書室で借りて来た動物図鑑をエスティと見ている。 見た事の無い動物を見つけては、エスティと一緒に大きさや鳴き声を想像してみたり、どんな果物が好きかな、等と話しながら盛り上がっている。 エスティは召喚獣ではあるが、リアにとっては初めて出来た弟の様な存在であり、本当に仲が良い。(バルエ姉弟については、年齢こそリアより下であるが、体の大きさはもちろん、精神面でもリアを年下扱いしているので、リアにとって2人は弟や妹には当たらない様だ) そんな仲の良い2人を保護者達は優しく……もちろん記録玉は動きっぱなしにして…見守っている。 そうして2時間程は穏やかで優しい時間が流れていたが、不意にキリエがリアとエスティを呼んだ。 「リア、エスティ、ここへおいで。」 その言葉にきょとんとしたリアだが、素直にエスティを抱いてキリエの所へ行く。 そうしてキリエに包み込むように抱っこされたリアだが、何かに気付いた様に顔をあげて、まわりをきょろきょろと見渡した。 「リア?どうした?」 ライナーが声を掛けるが、リアは首をかしげて何かを考えている風だ。 「…何か飲むか?」 フィランドの問いにも首を振ると、リアはシェラをじっと見る。 『…主、大丈夫ですよ。ここには強い戦士が沢山いますからね。』 ペガサスの言葉に、ライナーとフィランドに緊張が走る。 そして。 「…西、か……?」 「……ああ。距離はまだある、か…?」 ライナーの呟きにフィランドが同意しながら続ける。 2人のただ事ではない様子に、自然とカルラの緊張も高まる。 「……何だと言うのだ?…何か問題が?」 「嫌な感じのモノがこちらへ向かって来ているからね。大丈夫、カルラ君はココにいるといい。ライナー、フィランド君、…もちろん2人で十分だよね…?」 カルラの疑問に答えながら、イイ笑顔でライナーとフィランドをちらりと見やるキリエ。 「…ああ。」 「…大丈夫です。」 そんなキリエに、既にトライデントを具現させたライナーは短く肯定、フィランドも聖剣フランベルジュを召喚し、気を引き締める様に窓の外を見つめた。 「……にぃ…?」 不安そうなリアに、 「大丈夫だよ、リア。さあ、2人に行ってらっしゃいのキスをして。」 リアの小さな頭を優しく撫でてやりながらキリエが言う。 「……ん…」 リアが2人に手を伸ばすと、まずはキリエの膝からリアを抱き上げたライナーがリアの頬をひと撫でしてから額にキスして、次いでフィランドが忠誠を誓う騎士の様にリアの手を取り、細い指先にキスをした。 リアも2人の頬に行ってらっしゃいのキスをして、二人の戦闘準備は完了だ。 そうしてライナーはリアをキリエの膝に戻すと、 「…行って来る。」 プライベートテラスに繋がる大きな窓を開けた。 直後。 「緊急事態発生!こちらへ向かってくる多数の魔物を捕捉!魔物はクラーケン4体とサハギン5~6体と思われる!当船はこれより全速前進し魔物を振り切る!乗組員戦闘態勢で待機!キリエ殿達は至急ブリッジへ!」 船長の館内放送が響いた。 忘れ去られた国13 END

ともだちにシェアしよう!