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第5章ー20 忘れ去られた国-14

プライベートテラスから一気に階下のデッキへと飛び移ったライナーとフィランド。 フィランドは突然飛び降りて来た自分達に驚く船員達を見やり、 「魔物は俺達で全て倒す。……お前達は船を守れ。」 それだけ言うと、魔力を一気に高め、聖剣フランベルジュを発動させた。 しかし言われた船員達は慌てて2人を引き留める。 いくら優秀なカルフィール魔法学校の生徒とは言え、クラーケンは子供が戦って勝てるような魔物では無いのだ。 「なっ!倒すだとっ?!バカなこと言うな!クラーケンが4体もいるんだ!…お前達はクラーケンの怖さを知らないからそんな事が言えるんだ!…いいか?このまま全速力で振り切る!振り落とされない様、子供は中に入っていろっ!!」 しかしそんな外野の声は聞こえていないかの様に、二人は邪気が来る方向を見据えている。 「……来たか。」 ライナーが呟いた直後、船は大きな振動と共に止まった。 「……何っ?!バカなっ!早すぎる!」 「……だから言っただろう?…ここは俺達に任せてアンタらは船のメンテナンスを頼む。」 そう言うとフィランドは、早速船体に巻き付こうと左舷から出現したクラーケンの巨大な腕を一撃で切り落とした。 落とされても尚暴れ回るそれを、今度は強烈な炎で灰も残さない程に焼き尽くすフィランドを見て、船員達は言葉を無くす。 船体前方ではライナーが両サイドから襲って来た他の腕の3倍もの長さがある触腕を氷漬けにし、そのまま強い衝撃を与えバラバラに砕いていく。 目を見張るような2人の戦いぶりに圧倒され、茫然としている船員達に再度フィランドが「アンタ達は早く船内に戻れっ!」と声を上げた。 一方、呼ばれたため一応はカルラとリアを連れてブリッジに顔を出したキリエ。 聖獣2体も人からは見えないように姿を消しているが、ちゃんとリアの傍にいる。 しかしこの時点で既に大きな振動と共に船は停止。 船体の四面を魔物に囲まれた状態だったのだが、ゆっくりと船橋に現れたキリエは片腕でリアを抱き、反対の腕には先程までリア達が見ていた図鑑を持った平和なもので、まるで緊張感が無い。 「……その様子は、余裕、と考えてよろしいのですな?」 船長の問いかけにキリエはにっこりと、美しい笑顔を向けた。 「うちの子達は強いですからね。…特に前方で戦っている方の子は水属性にはとても強いのですよ。」 そう言う間にもライナーはクラーケン1体目を倒し、海中から攻撃してくる2体目を倒す為、海に飛び込んだ。 !!! 「…なっ?!海にっ?!」 船長だけでなく、ブリッジ要員が驚きに声を上げる。 「大丈夫ですよ。彼は海の中なら更に最強になりますから。」 「……ライナー、……おみず、あそび…?…いい、な……。」  …………。 …どう見たら遊んでいる様に見えるのか? 見た目は驚くほど美しく愛らしい子供。 しかしあまりにも独特な…はっきり言えばありえない感性に、船長はじめ周りの者達はカルラも含め、顔を引き攣らせている。 しかしそんな人間達を気にする事なく、キリエは海を見て羨ましそうにしているリアに優しく声を掛けてやっている。 「……そうだね、ライナーが帰ってきたらまた遊んでもらうといい。それまでもう少し待っていようね。」 しかし一方で、あくまでも余裕なキリエの様子に安心もしていた。 「……とっ、とにかくこうなってはもうお任せするしかありません。…船をお願いします。」 船長の言葉に、キリエは優雅に微笑んだのだった。 忘れ去られた国14 END

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