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第5章ー22 忘れ去られた国-16
◇Side:フィランド
さっさとクラーケン1体を倒して海に飛び込んだライナーを見て、フィランドも目の前の1体の足を次々と切り落として行き、最後に残った本体を強烈な炎で焼き尽くす。
目視できるクラーケンはあと2体。
…よし。いい調子だ。
コントロールも悪く無い感じで出来ている。
フィランドが自身の状態を確認しながら、次のクラーケンへと向かっていると、突然船の右舷から巨大な水柱が上がり、海面や甲板に魔物の…多分サハギンの手や足、その他の残骸が雨の様に降り注いだ。
「………。」
『ライナー!お前コレは無いだろう!?リアが見たらどうするんだっ!!』
『…ペガサスがいるんだ。視界制限がかかっているに決まっているだろう。』
『それでもだっ!大体コレを片付ける船員達だって……』
『…煩い。気になるなら掃除でもしておけ。…俺は船底付近にいるクラーケンを殺りに行く。お前は海面に浮かんでいるのを殺れ。』
こちから繋げた心話であるにも関わらず、ライナーはそれだけ言うと、心話を切ってしまった。
………。
分かっていた事だが、リア以外には一切の気使いをしないライナーに、フィランドは1つ溜息を吐くと、無言のまま甲板に散乱している“残骸”を焼き尽くしたのだった。
船に作用している結界は、船体から内側へ向かって作用している為、甲板にいるフィランドには作用していない。
その為、クラーケンの攻撃は全てフィランドへ向かう事になる。
四方から20本の足が次々と攻撃して来るのを、抜群に上がった身体能力と風の魔法で躱してはその足を切り落として焼く。
それをきっちり20回繰り返し、最後の本体部分を焼き尽くした時、同じタイミングでライナーが戻って来た。
「…中々やるじゃないか。……正直、お前ひとりで全部殺れるとは思って無かったぜ。」
「…次はお前から1本取ってやる。」
息を切らしながらも強気の発言をした俺に、ライナーは面白そうに口を歪めて嗤う。
そして船内で俺達が戦う様子を驚愕しながら見ていた船員達に、
「……船底に穴が開いた。氷で応急措置してある。後は任せた。」
それだけ伝えると、リアの待つブリッジへ向かおうとした……のだが、何かに気付いた様に、バッと振り返った。
続いて俺も西の上空を見つめる。
「……チッ…今度は空、か。…面倒な…!!」
ライナーがそう言っている間にも、敵の遠距離魔法攻撃の第1派が届き、第2派、3派と続けて来るが、全て俺とライナーで跳ね返すか反魔術で相殺した。
そうして。
目空から来たのは“あの”ガーゴイルだった。
「……お前、アレに当たるなよ。多少は丈夫になっているだろうが、あの毒は強い。」
「わかっている。…それに。万が一当たるようなことがあったら、今度は自分でそこを切り落とすさ。」
「…いい覚悟だ。」
そんな風に俺達が少々怖い会話をしていると、俺が何よりも愛し守りたい気配が近付いて来た。
「2人ともご苦労様。アレは面倒だから私が行くよ。君達の戦いは十分見させてもらったし。…今度はリアの相手を頼むね。」
キリエさんはにっこり笑顔でそう言うと、腕に抱いていたリアに“行って来ます”のキスをして、リアからも“行ってらっしゃい”のキスをもらうと、リアを俺に預けたのだった。
その後のキリエさんの戦いぶりは。
まさに『壮絶』、の一言だった。
輝く金色の翼を広げて飛び上がると、(もちろん人間には見えない様になっている)一気に加速してそのまま巨大な稲妻を一斉に放った。
10体はいたであろうガーゴイルは船まで来ること無く、一瞬の内に消えてなくなった。
「……やっぱラスボスはキリエ兄だな。」
ぼそりと呟かれたライナーの言葉に、俺は心の中で大いに賛同していたのだった。
◇Side:Firando END
忘れ去られた国16
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