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第5章ー28 緋国へ-2

船は進む。 海の切れ目の様な巨大な滝へと向かって。 落下点まで約3km、時間にして後10分位だ。 落差は視認できるだけでも約1km。 底は見えない。 水飛沫に視界が白く染まり、心なしか気温も下がりはじめると、ブリッジ要員達は皆押し黙り、祈るような気持ちで外を見つめている。 反対にキリエを始めとした一行は “アレ” は、リアルな幻影だと確信しているため、落ち着いたものだ。 リアやエスティにも保護者達の落ち着きが伝わっており、落下に対する恐怖などは全く感じていないようだ。 どころか。 これから楽しいショーが始まるようなワクワク感すら感じているような会話が繰り広げられている。 「……ね、エスティ。…もう、すぐ……おみ…ず、ばしゃぁん!……なる、…のね。……おも、しろ…そ、……ね……///」 『にゃあ!滑り台よりも楽しそうニャ!』 もちろんエスティの声は保護者達以外には聞こえない為、殆どの者達に子供の “ごっこ遊び” だと認識されている。 ……しかし、先の魔物襲来時の発言と言い、この子供(リア)は、あんなに愛らしい形(なり)をして、とんでもない感性だ。 …ハッキリ言ってしまえば、ちょっと怖い……と、船長以下乗組員達は一致した感想を抱いているのだった。 もちろん、そのとんでもない感性の子供を微笑ましそうに、心底愛おしむ目で見守っている保護者の方がもっと恐ろしいので、絶対に口に出すような事はしないが。 やがて。 船長が “これが最後” とてもいうように、声を張り上げた。 「まもなく落下地点!!全員衝撃に備えろ!……5、4、3、2、1………ッ!!!」 その瞬間。 船内にいるほとんどの者がぎゅっ、と目を閉じた、……のだが。  ????? 「……ッ。…こっ、これはっ……!!!」 全くの何の衝撃も無かった事に目を開いた船長は、目の前に広がる凪いだ海と、10海里(約18km)程先に薄っすら見える小さな島を、信じられない面持ちで見つめていた。 思わず船橋からデッキへと出て後ろを見たが、滝などどこにも無く、360度、青く静かな海が広がっているだけであった。 皆が茫然としている中、じっとペンダントを見つめていたカルラが口を開く。 「……間もなく誘導船が来るそうです。」 緋国へ 2 END

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