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第5章ー41 9尾の狐が守る国-12

リアの撮影会が一段落した所で、リアの希望により一行は九重殿の見事な庭園を散策していた。 抱っこが困難な衣装を着せられている為、リアは右手をライナー、左手をフィランドと繋いで歩いているのだが、着なれない衣装のせいで若干よたよたとしながら歩くリアは、生まれたてのヒヨコの様でとても可愛らしい。 そんなリアの様子を列の最後尾を歩きながら見ているのは、巫女の香月と次代羅紋、そして侍女数名だ。 「……それにしましても、神子様があのようにお可愛らしい御方だったなんて……///」 ほぅ、と、うっとり見とれる様に溜息を吐く香月や侍女達とは対照的に、表情が全く変わらないのが次代羅紋である。 しかしその実、漆黒の瞳はリアから一時も離れていない。 【Side:次代羅紋】 ……何と奇跡の様な御方なのか…… 羅紋は、香月達に着飾られ、可憐な花の様なリアを見つめながら、数時間前、はじめてリアと出会った時からの事を思いかえしていた。 お迎えにあがった船で、守護者の腕に抱かれ不安気に瞳を揺らめかせていた神子様。 神子様を歓迎する国民の歓声にすら、小鹿の様に怯えられ守護者に抱き付かれていた神子様。 …神子様の不安と戸惑い、そして怯え。 それを感じる度、すぐに神子様の元へかけより御慰めしたい衝動に駆られたが、そのように自身の感情に振り回されるなど、次代羅紋としてあってはならぬ事と、何とか自分を戒めその衝動をやり過ごした。 …そしてあのファルシオン秘伝を見ている時の事。 ファルシオン様が2度目に登場された辺りから、額の“紋”が一瞬冷たいと感じる程に熱くなった。 思わず声を上げそうになり口に手を当て俯いてしまったが、周りもファルシオン様の伝説とは異なる一面を知った事により、俯き涙する者達が多くいた為、目立ちはしなかったはずだ。  …あの時、御爺様は “紋” に何も異常は感じていない様だった。 ……私だけが感じた紋の異常…。 刺すような熱さは一瞬で収まったが、今も術を使う時に感じるやんわりとした熱さが続いている。  …まるで紋が私に何かを伝えようとしている様だ…… だとしたら、それは間違いなく神子様のことだろうと、何故か確信できる。 出会いからまだほんの数時間しか経っていないはずなのにも関わらず、懐かしく感じる神子様。 表情には全く現れていないが、羅紋は出会った瞬間から、リアの放つ、はじめてなのに懐かしく感じる甘やかな香りと不思議な空気感に捕らえられ、出会いから今に至るまで、気付けばその漆黒の瞳には常にリアが写されていたのだった。 【Side:次代・羅紋 END】 さて。 散策はリアが一番気に入っていたアカマツ付近から始められた。 緋国独特の文字で “赤松” と書かれるその木の傍には、6~7歳位の子供の様なアヤカシ達が、リア達から少し距離を置いた場所で、リアをじっと見つめていた。 それに気付いたリアはライナー達から一度手を離すと、アヤカシ達に向かって両手を広げ、それはそれは愛らしく、にこぉ、と微笑み、可愛らしい挨拶をはじめた。 『え、…っと。”アヤカ…シ”さん?……はじ…め、まして。……リア・ク、ランツ、…です///。…ん、と、…リア、と、エスティ、と、…あそぼ?』 そうして、最後にいつの間にか隣にいたエスティと一緒にぺこりと頭を下げた。 その愛らしさは、ペガサスやフーシエンにやっぱり残念な姿を披露させ、香月や侍女達は顔を真っ赤に染め失神寸前に追い込まれた。 次代羅紋は表情こそ変わらないものの、どんな姿も見逃さないというようにリアを凝視している。 そして守護者達は。 優しくリアを見守るように見せて、その実、全身全霊でアヤカシ達に無言の圧力をかけていた。 もちろんアヤカシ達もリアの事が気になってしょうがなかった為、リアからの誘いを断るつもりは無かったのだが、いかんせん周りにいる者達が怖すぎる。 一緒にいる子猫については問題ないが、神子の後ろでこちらを見て怖い位に微笑んでいる3人と、九重と何やら言い合っている高貴な気配を感じる見た事の無い羽の生えた馬。 ちなみにキリエ達守護者の無言の圧力をあえて言葉に表すなら、  …お前達、…まさか断らないよな?  ……さっさと出て来い。  …君達はお利口さんだと信じているよ。 と言った感じだろうか。 逆にアヤカシ達の心情を現すなら、  ………怖ッ!!! の一言に尽きるのだった。 9尾の狐が守る国12 END

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