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第5章ー42 9尾の狐が守る国-13
あの後アヤカシ達と仲良く遊んだリアとエスティはご機嫌で客間へと戻った。
それぞれの手には、先程アヤカシ達と作って遊んだ色付けされたマツカサと、キキョウや椿の花等で綺麗に装飾されたリースが握られており、それを見せ合いながら、明日はまたお揃いのお洋服を着てこれを頭に飾ろうね、と楽しそうに話している。
もちろん保護者達は2人の愛らしい様子をたっぷり堪能中だ。
さて、そうこうしている間に時間は進み、リア達の歓迎の宴が開かれる時刻が近付いて来た。
しかしここへきて、リアがその艶やかな衣装を重たいからもう脱ぎたいと言いだしてしまった。
確かに、あちらこちらに装飾の施された衣装は見た目にも決して軽そうでは無い。
むしろずっしりと重そうだ。
更には目元と唇を中心に施された化粧も気になるらしい。
今更ながら可哀想に思った守護者や香月達がどうしようかと悩んでいる間にも、リアは気になる目や唇をその小さな両手で擦って落とそうと試み……
……結果は勿論、綺麗に施された化粧は盛大に崩れ、とんでもない状況になるはずだったが……
だがそれは寸での所でそれは回避された。
!!!
それを見ていた守護者達は、
「……ほぉ…」
「………へぇ……?」
「………。」
と反応は様々であるが、総じて機嫌は悪そうだ。
そしてリアは。
「……??」
口元を拭おうとした手をやんわり止められ、それを止めた人物をじっ、と見上げた。
それまでその場にはいても、ほとんど喋りもせず、空気のようだったその人物…次代羅紋は、美しいカーブを描く眉がへにょりと下がって泣きだす寸前といった様子のリアを見て、ふっ、と優しく微笑むと懐紙を取りだした。
そうして。
「…失礼致します、神子様。」
一言掛けリアの前に跪くと、ほぼ同じ目線になったリアの柔らかな頬を右手でそっと支え、その小さな唇を丁寧に拭う。
「……まだ気持ち悪いですか?」
深く輝く漆黒の瞳に心配そうな色を浮かべ自分をじっと見つめるその人に、リアはこくりと頷き、早く全部取ってほしいと無言で訴える。
「……そうですか。この国の正装は重たいですし、あちこち締め付けますので、初めての神子様には少しお苦しいですね。……配慮が足りず申し訳ございませんでした。」
次代羅紋はそう言うと顔を上げ香月を見やり、視線を受けた香月は深く頭を垂れた。
「……確かに。私共の失態でございます。神子様があまりに愛らしくあらせられましたので、つい、色々と………申し訳ございません。…さ、神子様こちらへ。お召変えをさせていただきます。」
約30分後。
リアは先程までのあちらこちらを装飾された重い衣装とは対照的な、軽く柔らかな素材で織られた可愛らしい衣装に着替えさせてもらっていた。
高く結われていた髪も解かれ、今は上部をかるく結って可愛らしいリボンが付けられているのみだ。
先程までの艶やかな衣装のリアも勿論最高に美しかったが、少し背伸びをしているような微笑ましさがあった。
逆にこの愛らしい衣装は、今のリアが持っている雰囲気に一番似合っていると言える。
さっきまでは衣装の関係でしてもらえなかった(守護者達から見れば、させてもらえなかった)抱っこも、ちゃんとしてもらえて、リアはすりすりとライナーの腕の中で甘えモード全開である。
…うん、やっぱりリアは “こう” でなくては。
と愛らしいリアを交互に抱き締め、その花の様な甘やかな香りを堪能しながら、守護者達の脳裏には今日また一つ無駄な知識が増えた。
『リアを抱っこ出来ないような衣装は絶対ダメ!』
9尾の狐が守る国13 END
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