129 / 163

第5章ー48 古の紋-3

褐色の肌にオレンジ色の髪、そして燃え盛る炎の様な真紅の瞳。 背丈は12~13歳の子供位。 突然現れた、これまた見た事の無い生き物に、緋国組が驚きに言葉を失っている中、リアはフィランドに抱かれたまま上機嫌で久しぶりに会った精霊に手を伸ばす。 「…フラ、ン、…ちゃん…///」 『ヒサシブリダ、ユーグノコ。アエテウレシイ。……トコロデアルジ、ズイブン…フシギナトコロヘ、キタノダナ。イヤナケハイハナイガ、ヨウジンハオコタルナ。』 『…分かっている。…が。フランベルシュ、取り敢えずリアの話を聞いてやってくれ。』 フィランドはそう言うと、腕の中で一心に己の精霊を見つめてうずうずしているリアを一撫でし、フランベルシュの目前へと降ろしてやった。 『…ユーグノコ? ワレニ、ナニカヨウナノカ?』 そうしてリアがフランベルシュの精霊から聞きだしたのは、リアがフランベルシュととても似ている力だと感じる“朱雀”の気配がどこにあるか、…すなわち居場所と、羅紋と朱雀が会話するにはどうしたらよいか、という事だ。 上位聖獣であるペガサスや九重に聞いても居場所はわかったであろうが、“似ている”という点と、単純にリアが会いたかったという理由から、フランベルシュに聞くことにしたようだ。 リアの思いをちゃんと理解しているリア至上主義の保護者達は、久しぶりに会ったお気に入りの精霊に、にこにこと愛らしい笑顔を振りまいてご機嫌なリアを、満足そうに微笑みながら見守っていた。 そうしてその居場所は緋国の者達が “芙蓉山” と呼ぶ、島で一番高い山の辺りだとわかり、そこへは明日、ファルシオンの横笛を貰い受けた後、準備ができ次第向かう事になった。 ちなみに両者の『会話』については、会ってみないと分からないとの見解は、幻獣界組の共通した意見のため、取り敢えず答えは先送りにされたのだった。 また、“朱雀”について、香月から緋国で古くから唄われている “4人の神様” という、わらべ歌を1つ聞いた。  む~かし むかし   よにんの かみさま かくれ~んぼ  よにんの かみさま よっつの おいろ~  ひとりは おそら おおきなつのの か~みさま~  ひとりは だいち おおきなしっぽの か~みさま~  ひとりは ほのお おおきなはねの か~みさま~   ひとりは おみず おおきなうろこの か~みさま~  よにんの かみさま どこいった~  よにんの かみさま かくれ~んぼ 香月が涼やかに唄ったこのわらべ歌を、リアとエスティは喜んで何度も「もう一度」、と香月にせがみ、最終的には一緒に唄える位に覚えてしまった。 更にはエスティと2人で “振付け” まで考え、何度も楽しそうに2人で歌いながら踊って見せては、その愛らしさで保護者達を悶えさせたのだった。 もちろん、次代羅紋や香月、その侍女達も例外では無く、特に耐性の無い緋国の侍女達には数人、幸せそうな顔で逝ってしまった者がいた事も付け加えておく。 そして今も。 九重殿自慢の風流な露天風呂の中、キリエの腕に抱っこされた状態でリアが楽しそうに唄っている。 「………かくれ~…んぼ。……///」 「楽しいかい?リア?」 可愛い歌が終わった所でキリエが優しく問いかける。 するとキリエの腕の中で体を左右にゆらゆらさせて可愛らしくリズムを取っていたリアはくるり、とキリエを振り向き、にこぉ、と満面の笑みのままキリエに抱き付いた。 「にぃ…きもち、ぃ///」 サテュロス由来の陶器の様なすべすべの肌はリアのお気に入りの1つで、リアはキリエにきゅう、と抱き付いたまま、首筋に頬を寄せてすりすりと懐く。 懐かれているキリエは蕩けるような美しい笑みを浮かべ、リアの薄いからだを緩く抱き、幾つもの優しいキスを贈っている。 「「………。」」 しかしそれをただ見せられるだけのライナーとフィランドは複雑だ。 上機嫌のリアは文句なく可愛い。 キリエにしても神がかり的な美しさだ。 けれどもこんなに可愛いリアを独り占めされているのは正直、面白くない。 ちなみに大きな露天風呂を見たリアは、カルラと羅紋、そして何と香月にまで、 「…おふろ、…リア、……いっしょ、…はい、……ろ?」 と誘ったのだが、顔を赤くしたり青くしたりした三人は何とか理由を付けて断ったのだった。 そんな訳で今一緒に入っているのはリアを含めて4人だけなのである。 キリエの一人勝ちを阻止しようと考えを巡らせたライナーが、取り敢えずリアに声を掛けようとしたと同じタイミングで、リアが再度くるりとライナー達を振り向いた。 「……リア?」 どうした?とライナーが続ける前に、リアはキリエの腕から離れて立ち上がる。 そしてリアの表情を見たライナーが、コレはいたずらっ子の顔だと思った瞬間、リアはパシャーンとわざと水しぶきが上がる様、小さな体全体を使って飛び込むように湯に潜った。 そうしてそのままライナーに抱き付いたいたずらっ子は、ライナーが何かを言うより早く。 「…ね、ライナー……すざく、さん、……、かくれ、んぼ。……リア、さが…して、…み~つけ、…た~……する、の~………フィラン…ド、も、…いっしょ、ね…///」 「「………。」」  男、ライナー・クランツ 及び、フィランド・イプサム  可愛さに撃沈 古の紋3 END

ともだちにシェアしよう!