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第5章ー51 古の紋-6

羅紋にゆっくりと手を引かれ、狭い桟橋を通り船の前へとやって来たリア。 今は桟橋から船へと架けられた幅約30cm、長さ3m程の1枚の板をじっ、と見つめている。 船の揺れに合せて上下左右に気ままに動くその板を伝って船に乗るのだという事はリアにも理解できた。 ……でも。 リアは繋いでいた手を離し、代わりに、きゅうぅぅ、と両手で羅紋の腕に抱き付くように引っ付いた。 「リア様…?」 「……リア、…ひと、り、……のれ…ない。」 そう言うとリアは羅紋が何か言うより早く、くるり、と後ろを付いて来ていた保護者を振り返ると、一番近くにいたライナーに手を伸ばしたのだった。 ライナーに抱っこされて無事に乗船できたリアは、初めての乗り物に好奇心いっぱいでライナーの腕から降ろしてもらったのだが、小さな漁船は想像以上に揺れが強かった。 少し強い波が当たると、その度にリアの軽い体はぴょんぴょんと飛び上がるように跳ね上がる。 でもそれが面白かったのか今はエスティもふわりと浮いていた空中から甲板に降り、二人で仲好くぴょんぴょん、キャッキャッと楽しそうだ。 そうして全員が乗り込んで間もなく、漁夫たちの威勢の良い掛け声とともに船は出港したのだった。 出港後しばらくはライナーとフィランドに見守られながら甲板で遊んでいたリアだが、羅紋がお茶の準備が出来たと声を掛けに来た事により、小さな船に心ばかりに設けられた普段は食堂、兼、休憩室として使われている船室へと入った。 ペガサスは九重と船室の上部に設けられたデッキで何やら話し込んでおり、お茶を飲む気は無いようだ。 さて、幅3m、長さ7m程の船室は左右対称に入口があり、入口入って進行方向側には操舵室が、その後方が休憩室になっており、2台の長テーブルが縦に並びそれを囲むように3~4人掛けの長椅子(ベンチ)が4台設置されている。 リア達が入ると、入口から近い方のテーブル左側の長椅子にキリエ、反対側にカルラが向い合せで座り、既にお茶を飲みながら寛いでいた。 リアは迷わずキリエの座る方へと向かうと、その隣にエスティを抱いてちょこん、と腰かける。 更にその隣にはライナーが座り、向かいにフィランドが落ち着いた。 「楽しんでいるね、リア。目的地までは1時間位らしいから、遊んでいたらすぐだよ。」 キリエが優しくリアの頭を撫でながら言うのに、リアは少し考えて首を振った。 「ん、……んと…ね、……リア、おふね…で、らもん、…と、……おはな…し、……する、おやく…そく、……したの。」 「…そうか。なら羅紋殿を呼んでおいで。皆でお話しよう?」 古の紋6 END

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