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第5章ー56 古の紋-11

さて時間は少し進んで、妖達によって作られた道を進み始めて約1時間。 「「……かくれ~んぼ…///……にゃ♪」」 羅紋に大切に抱っこされたリアと、リアに抱っこされたエスティは、ご機嫌でお気に入りの歌を歌っている。 そんな愛い歌声を聞きながら先頭を行くのはライナーとフィランドだ。 リアの守護者としてその腕にリアがいない事に対し、始めは苦い表情をしていた2人だが、キリエが認めてしまった為、納得せざるをえなかった。 ならばせめて先頭を行き、危険をいち早く察知できるポジションを選んだと言う訳だ。 行く方向はリアのユグが知らせてくれるため、迷う事はない。 右へ左へとくねくねと曲がる道を進み続け、更に1時間程経ったころ、ゴツゴツとした大きな岩に囲まれた小さな空間へと辿り着いた。 ライナーとフィランドが一等大きな岩に上ると、そこは海に面した断崖である事が分かった。 海面からの高さから推察すると、おそらくは山の中腹よりやや低い位の場所だろう。 当初の予定では3合目の山小屋までを3時間で登る予定を立てていたのだから、3時間弱で5合目付近まで登って来たと言う事は、かなりの時間短縮ができた事になる。 ここで少し休憩を入れる事にした一行は、適当に腰かけ、あるいは立ったまま辺りを警戒しながら、思い思いに過ごす。 リアはと言えば、エスティと2人、ライナー達が先程登っていた岩場に上げてもらい、その高さと綺麗な景色にはしゃいでいた。 もちろん2人が落ちたりしない様、ライナーがしっかりその腕に抱いている。 10分程遊んだ所で、少し休憩するようにとキリエから声がかかり、「はぁい」と可愛いお返事を返したリアは、素直に岩から降り(勿論ライナーに降ろしてもらった)、今はキリエの膝に抱っこされながら、先程まで登っていた “大岩” をじっと見つめていた。 「リア?…何か気になるのか?」 あまりに一生懸命に岩を見つめるリアに、リア達の正面に腰かけていたフィランドが声を掛けた。 それはここにいる全員が気になっていた事なので、皆リアを見つめながら、その言葉を待っている。 するとリアはエスティをキリエに預けると立ち上がる。 そしてライナーとフィランドの傍へ行き、それぞれの手を取ると「こっち」と言ってくいくい引っ張り、二人を大小のゴツゴツとした岩が重なった所へと連れて行く。 「……えっと、…ね、……ライナー、フィランド、…これ、…と、これ、と…これ……、あっち、……ばーん、で…きる?」 そう言って幾つかの岩を指し示した後、こてん、と可愛らしく小首をかしげて2人を見上げた。 「…バーン、か?……この下に何かあるのか?」 かなり抽象的なリアの表現に対して、特に悩むこと無く普通に問い返すライナー。 一方で羅紋とカルラはお互いに目を見合わせて苦笑いだ。 「お気になさることはありませんよ、羅紋殿。アレで分かる彼らの方がちょっと普通では無いのですから。」 ちなみに、岩の下に何かあるのかと聞かれたリアの答えは、 「あな。」 ……と、実にシンプルなもので、リアの表現方法に耐性の無い者にとっては理解しがたく、羅紋はやはり少し困ったような笑みを浮かべながら3人のやり取りを見ているのだった。 古の紋11 END

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