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第5章ー57 古の紋-12

まずライナーが大岩を1m四方程度に割り、トライデントを突き刺して空中へと高く投げ、それに向かって衝撃波を放ち、更に30cm四方に砕く。 次いでフランベルシュを掲げたフィランドが、ライナーが細かくした岩を更に炎による爆発で粉々に砕いてゆく。 あちこちで次々と円形状に生じる爆発の光は、花火に良く似た形と色で、リアとエスティを喜ばせている。 もちろん、万が一に備えてキリエにしっかりと抱っこされながら、キャッキャッと可愛らしい歓声をあげてはしゃぐリア達は本当に楽しそうで、それを見ている守護者達やカルラ、羅紋の口元も自然に緩む。 そうして、みるみる間に岩は姿を消し、最後の欠けらを砕いたら後に残ったのはリアが最初に言っていた “あな” だけだ。 しかしその穴、大きく見積もっても縦横それぞれ70cm~75cm程度で、二足歩行のエスティがギリギリ立って入れる位のサイズである。 当然、同行者達でこの穴に普通に入れる者はいない。 小さなリアでさえ、しゃがむか、四つん這いにならなければ中を進む事は出来ないだろう。 それでもリアは入る気満々だ。 さてどうしたものか、と羅紋が思案している時、わくわくと瞳を輝かせたリアが可愛らしい声をあげた。 「ね、…みん、な。……ちっちゃく、なーれ!……して、…ね。」 その言葉に、どう言う意味だ?とカルラや羅紋が考える間もなく、目の前のキリエがライナー達を見て「25%かな。」と一声掛けると、リアとエスティを抱いたままどんどん小さくなってゆく。  !!! 2人が驚いている間に、ライナーやフィランド、そして聖獣達も同様に穴に入るのに適したサイズに擬態を完了させた。 そして残された2人が困惑していると、本当に小さくなり、今は40cm位の大きさになったリアが、とてとてっ、と一生懸命にこちらへ走って来るのに気付いた。 羅紋が慌ててリアの所へ行き、そっと抱き上げると、可愛らしくお礼を言ったリアが口を開く。 「…あのね、らもん、と、…カルラ……ちっちゃく、…なぁれ、…わか…ら、ない?」 「…はい。残念ながら私にはそのような高貴な技は使えませぬ。ですが…。リア様がここへいらしたという事は、何か手があるという事なのでしょうか?」 「ん。…えっと、ね、……リア、が、……じゅも、ん…やってあげる…ね…///」 そう言うとリアは、2人の所へ来る前、キリエに指示された通りの “呪文” を唱えた。 「……らもん、……と、カルラ、……ちっちゃく、な~れ。…かわい、く…な~れ…!」 リアの “呪文” が終わってすぐ。 2人の体はどんどん縮んでゆく。 体が小さくなるに連れ、リアを抱くバランスが崩れて行くため、羅紋は間違ってもリアを落とさない様、必死でバランスを保つ。 そして元の大きさに比べ、キリエが最初に言っていた「25%」位のサイズになると、2人の擬態も完了したのだった。 穴の入口から、ゴツゴツとした岩場の道が上へと向かって延びていた。 自分で歩きたいと希望したリアをいつでもフォローできるよう、リアのすぐ前をライナーが、そしてリアの後ろにはフィランドがピッタリと付いて守りながら歩いている。 子猫であってもれっきとした聖獣であるエスティは、危なげなくリアの横を登っており、フィランドの後ろに羅紋、カルラと続き、キリエはしんがりを取り、シェラサードと九重が先頭を行く。 そうして100mほど登った所で、一気に視界が開けた。 「…鍾乳洞、……か。」 リアより1歩早く登り終えたライナーが、リアが登るのを助けてやりながら、目の前の光景を見て呟く。 そして無事に岩場を登り終えたリアとエスティも、視界に広がった見たことのない光景に歓声を上げたのだった。 しんがりのキリエが岩場を抜けると、取り敢えず全員が擬態を解いた。 キリエやライナーは完全体へと戻り、聖獣達もいくら視界が開けたとはいえ、洞窟内では大きすぎるペガサスを除いて完全体に戻った。 羅紋とカルラは情報としては持っていたが、完全体になったキリエとライナーの2mを優に超える大きさを目の当たりにし、やはり驚きを隠せないでいる。 何しろ、キリエには黄金に輝く羽が、そしてライナーには青銀に光る鱗があるのだから、思わず凝視してしまうのは仕方ない事だろう。 一方でリアはとても嬉しそうだ。 大好きなライナーの “あおのひらひら” を、ぺたぺたしたり、キリエの “きんのふわふわ” に、もふもふしたりと、愛らしい仕草でマルシエ組にべったりと懐いている。 ひとしきり堪能した所で、皆の視線が自分に向けられている事に気付いたリアは、思わず恥ずかしそうに頬を染め、最大の保護者であるシェラサードにギュッと抱き付いたことから、同行者達の更なる微笑みを誘ったのだった。 古の紋 12 END

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