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第5章ー58 古の紋-13
小さくなったリアは丹精込めたお人形のように本当に愛らしく、リアの召喚獣であるペガサスといえども、思わずこのまま浚って逃げたくなる程である。
何とかその衝動を抑えたシェラは、大きな羽で優しく包み込むようにしていたリアに、羅紋とカルラ、そしてリア自身の “ちっちゃくな~れ” の呪文を解除するよう促す。
それにお利口さんのお返事を返したリアは、
「…えっ…と。……リア、と、…らもん、と…カルラ、もとにも~どれ♪」
上機嫌で可愛い呪文を唱えたのだった。
一方、あまりにも簡単な “呪文” で、2度にわたりサイズを変化させらせた二人は、普段はその冷静さに定評があるのだが、今回ばかりは驚きを隠せないでいる。
「……これ、は…言霊なの…か?」
「いや、違うな。」
自身の形を確かめる様に見ながら、小さく呟いたカルラの言葉に答えたのは、ヒト型をとったフーシエンこと、九重だ。
「…ではやはり…。…これは神子であらされるリア様のお力と言う事なのですか、九重様?」
呪文を終えた後、そのまま腰に抱き付いて懐いたリアをそっと支えながら羅紋が問うと、それまで黙って見ていたフィランドとライナーが口を開く。
「それも違うな。」
「ああ。ソレはアンタら自身の力だ。リアは “きっかけ” を与えたに過ぎない。」
……きっかけ…
ライナーの言葉に、羅紋は腰に抱き付いたリアを見る。
すると羅紋の視線に気付いたリアは、にこぉ、と愛らしい笑顔見せるとともに、抱き付いていた手を離し、その細い腕を羅紋に向かって伸ばした。
心得た羅紋がリアをそっと抱き上げると、今度は首にぎゅっ、と抱き付き、その様子を微笑ましく見ていたキリエに向かってご機嫌な笑顔を向ける。
「楽しそうだね。リア。」
「…ん。リア、たのし…い/// ………ね、にぃ。リア、らもん、すき~……///。」
!!!
そのリアの言葉に反応したのはライナーとフィランド、そして九重だ。
特に前の2人は思わず羅紋へ向かって殺気を放ってしまったのだが、それを察していたペガサスによりリアには目隠し(結界)が張られたため気付かれることは無かったが、羅紋は別である。
刺すような殺気を二人から向けられ、思わずリアを抱く手に力がこもる。
特に本体へと戻ったライナーは、ほぼ聖獣という存在だ。
その為、その体から放たれる殺気は、ただの人間であれば1秒と持たずに気絶してしまうレベルである。
「……ッ……。」
益々強くなる圧力に、思わず羅紋が小さく顔を歪めた時、ふぅ、と一つ溜息を吐いたキリエが、二人にのみ聞こえる心話で止めに入った。
『…2人とも、そこまでだ。気持ちは分からなくも無いが “リアが決めた事” だ。…この意味は分かるね?』
『『…………』』
『………悪い。』
『フィランド君?』
『……すみませんでした。』
悪いと言いながらもまだ不服そうな二人に苦笑いを誘われるが、これだけは言わねばならないと、キリエが再度心話を繋げる。
『…私達は皆リアを愛するためだけにある存在だ。…だがリアを縛る存在であってはならない。…いいね?』
古の紋13 END
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