143 / 163

第5章ー62 古の紋-17

「……外の世界、ですか…。」 朱雀の言葉を思い出しながら、ふう、と一つ息を吐いた黒曜。 リアはシェラに支えられながら、そんな黒曜の事をじっと見つめていたが、やがて黒曜の緋国独特の装いで、その特徴とも言える広く開いた袖口をくいくい、と引っ張る。 そうして優しい視線が再度自分に向けられると、ゆっくりと口を開いた。 「……こくよ…う、…リア…たち、と、…いっ…しょ、……くる…?」 「………!!! …リア様……!」 リアの言葉に、黒曜はリアの両手をそっと握りその小さな掌に己の “紋” を押し当てる様にして跪いた。 「…リア様…。…まずは家の者達や重鎮達にこの度の事を報告しなくてはなりません。……その上でわたしは当代に国を出る意思を伝えようと思います。…おそらく当代は反対するでしょう。…しかし私の心は決まっております。朱雀様から授かったこの力、あなた様の為に使わせていただく事をお許し頂けますか…?」 黒曜はリアの手を額に当てたままゆっくり話してはいたが、緋国独特の言葉遣いや言い回しにリアは混乱していた。 しかしシェラや優しく頷いたのを見て安心すると、黒曜からそっと手を外し、そのまま黒曜の頭を優しく撫でて微笑む。 「…リア、こ…くよう、おとも、…だち。…だから、だい、…じょうぶ。…いっしょ、……いこ、……ね。」 そして数日後。 リア達一行は帰路へ着く為、あの小さな港へ来ていた。 その中に往路には無かった姿がある。 「……兄上、ご心配には及びませんわ。お爺様やお父様の事はわたくしにお任せ下さいませ。…九重様もご助力くださいます。」 凛と佇み静かに語る妹の姿に、次代羅紋こと黒曜も静かに頷き、更に続けられた言葉に覚悟を新たにする。 「…どうか兄上はご自身の御心のままにお進みください。それがきっと神子様、…ひいては世界の為となる事でしょう。」 1418年 土の月・41日 緋国の次代・羅紋こと黒曜 運命の神子とその守護者達と共に旅立つ 古の紋-17 END

ともだちにシェアしよう!