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第6章ー3 西の大国-3

時は現在に戻り、大陸史1418年・花の月・5日。 リア達が緋国から帰国しマルシエ滞在を経て、カルフィール魔法学校へ帰って来た翌日のこと。 カルフィール魔法学校内は、毎年恒例の「学園魔武術杯」の話題で持ちきりだった。 と言うのも、来月氷の月初めに開催される国際的にも知名度の高い「シェルバ魔武術杯」、通称・シェルバ杯。 これの参加者を決めるための行事だからである。 シェルバ杯に参加できるのは20歳以上の成人に限られ、基本、学生は参加不可であるが、将来を担う若者に経験を与える目的で学生特別枠が設けられている。 ただし学生の参加については厳しい条件があり、第一にカルフィン共和国に3校ある国立魔法学校のいずれかに在学しており、学年が5学年以上である事。 次にその校内において行われる「学園魔武術杯」で優勝する事。 この2点である。 参加についての強制は全く無く完全な希望制であり、希望者全員が総当たり戦をする事になっている。 また魔武術杯と同じ日程で、魔武術杯参加者と生徒会役員及びクラス委員長を除いた生徒全員参加が義務つけられた催しがある。 授業の一環として行われるそれは、分かりやすく言えば「宝探しゲーム」だ。 もちろん単なる宝探しではなく、火水風土の魔法で仕掛けられた障害物満載のエリアが会場となるため、毎年多くのけが人が出る事でも知られている。 ルールは、学年問わず3~15人程度のチームを組み、エリア内に仕掛けられた障害をクリアしつつ、ご褒美玉(赤6点・青3点・白1点)を沢山集めたチームの優勝。 エリアは3段階(初級・中級・上級)のレベルに分かれており、任意で選択する事が出来る。 それぞれのレベル毎に優勝~6位までのチームには、参加レベルと集めた点数に応じて魔法具等のご褒美が用意されている。 チーム分けも、参加エリアの決定も全て生徒達の自由となっている。 チーム戦と言う事は、強い者と組むことができれば有利になるのはもちろんであるが、魔属性のバランスや相性、参加するレベル等も吟味しなくてはならない。 その為、学内数か所にある掲示板には現在、 『求む!水属性、中級レベル参加希望者!』や、 『来たれ!回復系ランクA以上の君!共に上級レベルで戦おう!』、 『当方、火BB・3名、土BB・2名、風Bが1名の6名チームです。初級レベルでのんびり頑張りたい方、あと数名求む。』 等の伝言が所せましと掲示され、掲示板の前はいつでも生徒達で溢れかえっている。 そしてその掲示板にやって来た生徒達が最初に探すのが、“クランツ兄弟” の情報だ。 チーム人数に上限は無いが、最低人数が3名以上と決まっているため兄弟だけでは参加できない。 最低でもあと1人、必要になる。 その場合一番に名前が上がるはずのリアの騎士、フィランドは生徒会委役員なので始めから除外される。 故に、生徒達は “クランツ兄弟と同じチームになれるかも知れない”、という淡い期待のもと、毎日目を皿のようにして掲示板を見て回るのだ。 さらに言えば、クランツチーム最後の一人として、現在のところの筆頭候補とも言えるサーガの所にも休みなく「ぜひ一緒に」と声をかけに来る者が後を絶たない。 しかし実のところ、ライナーは学園長に特別措置を主張し、リアと2人の特別チームを作るつもりでいた。 この事は緋国から一度マルシエに帰った際、フィランドから行事の事を詳しく聞いた上、家族及びフィランド、そして新しい守護者、黒曜を交えて入念な会議を開催した結果、決めた事である。 特にフィランドについては、騎士である自分がリアと共にいられないのに、第三者である誰かがリアと共にあるなど絶対に許せるはずも無く、自らも学園長の説得に乗り出す気マンマンであった事も追記しておく。 西の大国3 END

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